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※注意 
この小説は二次創作です。
よって、原作を知らない人は原作を見ること推奨です。
作品名は「ほしのの。」
これ以上は自分で探しやがってください。
あと、キャラが壊れてるのは仕様です。
泣いて悲しめ、愚民ども!(ぁ

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学園が崩壊してから約一週間。 
 お父さんとお母さんが(ほとんどお母さんだけど)頑張ったおかげで、食い扶持が無いって人はいないみたいです。
 もっとも、今もどこかに行ってるらしく、ボクは今日も一人で街中を散歩。 ちなみに、アーちゃんはワトソンと一緒に朝早くからどっかに行っちゃうんだよね。
「すみません、今朝は思いっきり叫んでしまって」
「いや、早く来すぎた俺も悪いわけですし」
 声の方向を見ると、なみさんと勝敗さんが一緒に歩いていた。
「なみさーん♪」
 ボクが駆け寄ると、なみさんが微笑んでくれた。
「えっと、この子は誰でしたっけ?」
 勝敗さんは覚えてないみたいだ。
「学園で黒い子猫と一緒にいた子ですよ」
「あぁ、あの見つけるとすぐに逃げちゃう子か」
 勝敗さんも思い出してくれたみたいだ。
「二人は何でこんなところに?」
 しかも、二人っきりで。
「えっと、私が家でピアノ教室を開いてるんですが、通ってる子供達におかしやジュースを用意しようと思って」
「そうなんだ~」
 ちなみに、生徒の数は7人らしい。
「それじゃ、ボクはそろそろ行くね」
「気をつけてくださいね」
「うん。 二人とも、お幸せに!」
 そう言うと、二人の顔が真っ赤になる。
 二人とも、分かりやすいなぁ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何かおもしろいことないかなぁ~」
「それじゃあ、緋月と遊びましょ」
 突然、目の前に変態緋月が現れた!
「来るな変態!」
「こんばんわ、素敵なおチビさん。 僕らよく似てる~」
「似てねぇよ。チラネェヨ!」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに・・・」
「何やってんのさ」
 そこに現れたのは救世主月ノ宮さんと1さんだった!
「この変態ヒツキから助けて~」
「ほら、その子も嫌がってるしさ」
 と、1さん
「ギンさんとひっつんは友達だもん!」
「友達ジャネェヨ!」
「・・・この子は否定してるけど?」
 と、月ノ宮さん
「嫌よ嫌よも好きの内って言うじゃん」
 駄目だ。もうこの変態緋月からは逃れられないんだ。
 そう思うと、瞳に涙が溜まりはじめる。
「おいおい、泣いちゃったぞ」
「ひっつんがこんな可愛い子を苛めたー」
「え!? ひっつんのせいなの!?」
 ボクが本格的に泣きそうになった時
「ミタヨー」
「ミタヨー」
「ミマシタヨーw」
 そこに現れたのは、黒い三連星Gステ学園でもトップの情報収集能力を持つ3人組だった。
 現在は、その情報収集能力を国のために使ってるらしい。
「元Gステ学園の体育教師の緋月さんが幼女を拉致しようとして、泣かせるなんて・・・」
 と、馬の骨さん。
「まったく、私は悲しいですよ?」
 と、八極さん。
「この情報を流されたくなければ、お金を積もう」
 と、アイクレスさん。
「ちょ、金とか。 二人とも助けてよ!」
 返事が無い。加勢する気は無いようだ・・・。
「薄情者ー!」
「はいはい、で、いくら出すんですか?」
「こんなの脅迫だ! 訴えてやる!」
「いいですけど、そしたら魔剣を持ってることをバラしますよ?」
「うぅ・・・。ひっつんは悪いことしてないのに・・・。」
 緋月が落ち込んでいる今がチャンスだ!
 そう思って、僕は全速力で走る。
 緋月に呼ばれてる気がするけど、構うもんか。
 そうして、ボクはひたすらに走った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 気が付けば、随分と遠い場所まで来ていた。
 帰れなくはないけど、家まで帰るのには結構かかる。
 何匹もの鳥が空を飛んでいる。
「はぁ・・・。 ボクも鳥になれればなぁ・・・」
 そう呟くと、空から何かが落ちてくる。
 それは、ボクの両手に落ちてきた。
「何故に・・・?」
 それは、カセットテープだった。
 ボクは、中身を聞いてみることにした。

「あーあー、マイクのテスト中」
 あれ? この声は・・・。
「こんにちわー! 皆のアイドルのハーピーですぅ♪」
「オマエは黙ってろよ! ていうか、チョーシに乗ってんじゃねーよ!」
 この声は覇者さん・・・?
「グシャオこそ、喋らないでください!」
「二人とも、喧嘩はやめてください!」
 この声はハルさんだね。
「えっと、録音中ですよ・・・?」
 あ、苦労人シャウトさんだ。
「ハペーのせいで、これを聞いてくれなかったどうするんだよ!」
「グシャオのくせに、生意気過ぎですぅ!」
「だから、喧嘩はやめてください!」
「・・・これを聞いてる人は『はぁぴしゃーはるー』という、私たちのバンドを知ってますか?」
 どうやら、3人とも、別の部屋に行ったみたいです。
「私たちは現在、各地でライブ活動をしています。 興味があれば、ぜひ御越しください。 最高の音楽をお届けしますので」
「録音は終わったですかぁ?」
「うん。 丁度終わりましたよ」
「あ、最後に私たちの歌を聞いてもらうっていうのはどうかな?」
「さすがはるおきゅん、いいアイディアだよ!」
「やっぱり、グシャオとは器というか、格が違いますね♪」
「んだと!? やるのか!?」
「御託はいいから、さっさとかかって来いですぅ!」
「いいかげん、喧嘩はやめてください!」
「あの・・・。 楽器とかは私一人で持ってくるんですか。 そうですか」

10分後・・・

 やっぱり、歌うときは息がピッタリだなぁ・・・。
 ・・・緋月とも、もう少し仲良くなってもいいかな。うん。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 なんか、お腹すいてきたなぁ・・・。
「ねぇ、奢ってよ! ていうか、奢れよ!」
「お前はもう少し、人に頼む時の態度を勉強するべきだと思うぞ・・・?」
 あの二人は学園の生徒会長だった理奈さんとハルキヨさんだ。
「じゃあ、お願い☆」
「・・・なんでだろうな。 今、無性に腹が立った」
「・・・いい加減にしないと、暴れるよ?」
 なんか、脅してる・・・。
「・・・分かったよ」
 あ、とうとう諦めた。
 私も見つかったら食い殺されそう大変そうだし、見なかった事にしよう。
「あ、おーい! 銀ちゃーん!」
 ・・・簡単にバレた。
「学園にいた子供だな。 どうしてこんな所に?」
「えっと、そのう」
「銀ちゃんをいぢめちゃ駄目だよー」
「いや、俺は何もしてないぞ」
 まさか、食い殺されそうとんでもない目に合いそうだから逃げたいなんて言えないし・・・。
 ぐるぐるきゅ~。
 ・・・・朝から何も食べてないしね。
「ほら、銀ちゃんもお腹がすいたみたいだし、奢れよー」
「この子に奢るのはいいとしよう。 だが、お前に奢る飯はねぇ」
「・・・ロリコン」
「な!? なんでそうなる!?」
 ハルキヨさんが明らかに動揺してますよ。
「ロリコンー」
「やめろって!」
 明らかに周りの人の視線が集まってます。
「じゃあ、奢れ」
 ほとんど脅迫だった。
「・・・分かったよ」
 その言葉を聞くと、理奈さんの顔が明るくなる。
「わーい♪」
「はぁ・・・」
 理奈さんとハルキヨさんの表情が正反対だった。
 ハルキヨさんは学校から出ても苦労人だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ハルキヨさんに奢ってもらって、満腹になったボクは二人と別れた。
 なんでも、『二人だけ』で行くところがあるらしい。
 もしかして、デート中だったのかな?
 だとしたら、悪い事しちゃったかな?
 あの木の陰で熱く語り合ってるのはガラサーさんとリョウさんかな?
「なら~が~の件について」
「渋いですね。~が~で~だから~ということが分かります。ただそうなると、~が~だと・・・」
「それは~が~ってことでいいだろう。~なら~だ。結局は」
「「ティターンズは力だ!」」
 ・・・二人は私に気づいてないみたいだし、私の出番は無さそうだから他の場所に行こうっと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ふぅ、今日も楽しかったなぁ~」
 ていうか、やたら学校の人たちの遭遇率が高かった気がするけど。
「未成年にお酒を飲ませるのはやめてくださいよ」
「そんな硬い事は言わずに! 久しぶりに会ったんだから飲もうじゃないか!」
 お酒を薦めてるのはゆ~さんで、明らかに困ってるのはレオさんだ。
「あ、銀ちゃんも飲みませんか?」
「「未成年にお酒を飲ませようとしないでください!」」
「そんなの誰が決めたって言うのさ」
「「国の偉い人だ!」」
「硬いこと言わないでさ~」
「「飲んだら犯罪ですよ!?」」
「大丈夫だって!」
「「アンタはそれで謹慎喰らっただろ!」」
 ボクとレオさんは見事なまでにシンクロしていた。
 ていうか、ゆ~さんふざけ過ぎ。
「まぁまぁ、そんなにツッコミ入れてたら疲れたでしょ。 飲む?」
「「だから酒は」」
「いや、水だよ」
「まぁ、それなら・・・」
「あ、銀ちゃ・・・」
 レオさんが制止する前に、私は目の前の透明の液体を飲み干す。
 すると、世界がぐにゃりと曲がっていく。
「いや~、本当に騙されるとは」
「アンタは最低だ!」
 レオ君の叫ぶ声が聞こえる。
 ああ、これってやっぱりお酒だったんだ。
 でも、悪い気はしなかった。
「・丈・・・・私・・・考・・・・・」
「・・子・・・・おい・・・・じゃ・・・」
 意識が霞んで会話がうまく聞き取れない。
「こ・・・か・・・・引き・・・た」
 二人じゃない人が来たみたい。
「君・・・誰・・・・」
「俺・・・・・の・・・・・・になった・・・・・」
「・・・君・・・なんだ」
「・・生・・・・知・・・・・か?」
「う・・・じゃ・・・・たよ」
 その言葉を境にボクの意識は飛んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ここは・・・? ボクの部屋?
「あ、やっと起きたー♪」
「心配したぞ」
 声のした方に顔を向けるとアーちゃんとワトソンがいた。
「それでは、この娘が起きたことを二人に報告してくる」
 そう言って、ワトソンが部屋を出て行く。
「行ってらっさーい」
 アーちゃんは手をヒラヒラさせながら見送る。
「んで、頭が痛むとか、そういう症状はない?」
 アーちゃんが聞いてくる。
「うん。 それどころか、いつもより身体が軽い感じ」

「ふぅん、それならいっか」
 何が『いい』んだろうか・・・。
 気になるけど、アーちゃんの笑みが怖いのでやめた。
 突然、大きな音と共にドアが開いて、お母さんが入ってきた。
「銀さん!」
 そう言って、思いっきり抱きつかれる。
 ていうか、苦しい・・・。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」
「酒を飲んだって、怪我はしないよ~」
 アーちゃんがのんびりとツッコミを入れてるけど、ボクとしては微妙にヤバイ
 ていうか、死にそう・・・。
「そのままだと、銀ちゃんが死んじゃうよ」
 その言葉で、私がヤバイ状態になりつつあるのに気づいたらしく、慌てて放す。
「あ、私ったら、つい・・・」
 た、助かった・・・。
 今、女神様に手を振られちゃったよ・・・。
「・・・大丈夫か?」
 ドアの前に、見知らぬ少年が立っていた。
「えっと・・・」
 この人誰?と無言で二人に聞いてみる。
 アーちゃんからはウィンクが返ってきた。そうじゃないし。
「えっと、この子は鉄(クロガネ)て言うの」
 鉄という名前の彼はこちらに軽く頭を下げる。
「銀さんをここまで運んできたのも、この子なんですよ」
「あ、ありがとうございます」
 まさか、命の(?)恩人だったとは。
「別にいい」
 彼は特に気にしてないように言う。
「彼は訳があって、しばらくここに住むことになったんです」
 ふ~ん。そうなんだ。
 ・・・ちょっと待って。
「え・・・?ここって、この家?」
「他にあります?」
 ないよね。やっぱ。
「・・・よろしく」
「あ、こちらこそ」
 まぁ、確かに無口で赤髪で強い意志があるような無いようなよく分からない目をしてる人だけど、悪い人じゃないし。多分。
 


 そして、彼が新たな物語の始まりの鍵になることは、誰も知らない・・・。

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私は、『ソレ』を睨むように見つめる。
『ソレ』は、私のことを見ようともしてないわけだけど。
そんなの、関係ない。
私は手に持っている『武器』を持って、『ソレ』に一撃を喰らわせようと走る。
『ソレ』は、私を見るが、逃げようとはしない。
逃げられないというほうが正しいのだろうが。
私は、今までの恨みを全て『武器』に込め、『武器』を振り上げる。
その時、『ソレ』は口を開き、喋りだした。

























「あんた、こんなに忙しい時ににダンボールを掲げて、何をしてるの?」
 『ソレ』こと、佐藤 千鶴は多少怒気を放ちながらこちらに言い放った。

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 この世界はとても不思議だと思う。
 例えば、地球が出来たことも不思議だし、その後で生物が生まれたことも不思議だと思う。
 それに、どうして猫はあんな可愛く進化したのかも不思議だ。
 不思議過ぎて頭がショートしてしまいそうなくらい。
「ねぇ、智ちゃん」
 私は回転椅子をゆっくり回転させながら高級そうなベッドに寝転がっている智ちゃんに声をかけた。
「……んー、なぁに?」
 今まで寝ていたのか智ちゃんは反応は普段より鈍かった。
 単純に面倒というのもあるんだろうけど。
「ごめんね、ちょっと聞きたいことがあって」
「んー……」
 なんだか、こんなくだらないことを聞くために起こしてしまったと思うと罪悪感を感じるけど、今さらやめるのもどうかと思う
から素直に聞いてみることにした。
「魔王に世界の半分をやろうって言われたらどうする?」
「魔王を殺して世界を支配する」
 うーん、智ちゃんってば物騒だなぁ。
 というか、私が聞きたいこととは違うことを聞いちゃった。
 失敗だね、テヘ。
 そんなことより、地球の誕生秘話とか猫とかその他色々と不思議で気になることは沢山あるけど、今一番気になることは――
「私たち、ちゃんと家に帰れるのかな……?」
 ここから生きて脱出出来るかどうか。
 それが一番気になることだった。


 私こと愛澤なゆきは友達の篠宮智美と一緒に知り合いの別荘に来ていた。
 智ちゃんの家がお金持ちだからその繋がりで招待されたらしい。
 ただ、智ちゃんにとってはここに来ること自体はどうでもよかったらしいのだけど、私が前々からこういうところに来たがっていたのを思い出して「友達も一緒でいいなら」と言ってくれたという話を聞いたときには感動したものだ。
 話がずれたけど、要は『私は智ちゃんのおかげで来れた』ということだ。
 前々からこういうところで実際に暮らすとどういう感じなのかを知りたかった私としてはとても感謝している。
 もちろん、何の関係もないような私に対しても優しいここの人たちにも。
 食事は美味しいし、探検は出来るし、海は泳げるし。
 問題があるとすれば、今日になって帰りのボートが故障してしまったことだ。
 俗世との関わりを断つためにこの島には電話などはなく、毎朝船で来る牛乳屋さんに頼るしかないらしい。
 話を聞いたときは帰れないということを考える前に牛乳屋さんは俗世じゃないのか、と心の中で突っ込みを入れてしまったのはまぁ、余計な話。
「大丈夫よ、明日の朝には迎えが来るんだし」
 智ちゃんは面倒くさそうに言った。
「でも、殺人事件が起こるかもしれないし」
「ミステリの読みすぎよ」
「え、ミステリで読んだことあるのは『そして、だれもいなくなった』くらいだよ?」
「……じゃあ、ドラマとかの見すぎよ」
 智ちゃんは疲れたような声でそう言った。
 やっぱり、昨日の探検の疲れが残ってるのかも。
「智ちゃん、大丈夫?」
「別に何も問題ないけど?」
「なら、いいけど……」
 智ちゃんの体調のことを考えていると扉を軽く叩く音が聞こえた。
「どうぞ」
 智ちゃんのその言葉に「失礼します」と言ってから入ってきたのはこの家の執事の千羽さんだった。
 もう髪も髭も真っ白だというのにタキシードを着るその姿はかっこいいと思わずにはいられない。
 私のお父さんとは大違いである。
「おはようございます。お嬢様方」
 千羽さんはそう言って深々とお辞儀をした。
 智ちゃんはこの館の人たちと面識があるからともかく、ただ付いてきたたけの私にまでこの態度を崩さない辺り、一流の執事だな、と思う。
「朝食が出来ましたので、そのお知らせに参りました」
「分かった、すぐ行くわ」
「ありがとね、セバスチャン」
 セバスチャンというのは私が勝手に付けたニックネームである。
 智ちゃんには古いとか言われたけど、執事と言ったらやっぱりセバスチャンだと思う。
「それでは」
 千羽さんは頭を下げ、最後にそう言ってから扉を閉めた。
「……私はこのまま行くけど、どうする?」
「んー、私は着替えてから行くわ」
「あーい」
 私はそれ返事をしてから部屋を出た。
 智ちゃんとはこの館に来てからほとんどずっと一緒にいたから一人でいるというのは割りと不思議な気分になる。
 まぁ、ここには二日もいたんだし、智ちゃんなしでも迷わないでしょ。 多分。
 そんな初めてのお使いさながらの緊張感を感じながら歩いているとこの館の主人――光輝さんの息子である大地さんとメイドの菊花さんが歩いているのが見えた。
 私は大地さんのことは苦手だからあまり近づきたくはなかったりする。
 まぁ、いくら何でも失礼だとは思うから無視したりはしないけど。
「こんにちわ」
 私が声をかけると二人は振り返る。
 大地さんは笑みを浮かべ、菊花さんは無表情で私を見た。
「よう、嬢ちゃん」
「おはようございます」
 大地さんは軽く手を上げるだけだというのに、菊花さんは千羽さんと同じくらい頭を下げた。
 まぁ、菊花さんはメイドだからなのだろうけど。
「ん、篠宮の嬢ちゃんは?」
 大地さんは智ちゃんがいないことに気づくとそう尋ねてきた。
「別に。 着替えてるから先に出ただけですよ」
「そういう時は待っててやれよ」
「そんなの私たちの勝手でしょう」
「は、そりゃそーだ」
 ……やっぱり、私はこの人が苦手だ。
 何を考えてるのかさっぱり分からない。
「大地様、はやく向わなければ海様に取られてしまいますが」
「わかってるって。 ……じゃあな」
 そう言ってから大地さんは歩いて行った。
 ……どうせ、食堂でまた会うんだから一緒に行ってもよかったのに。
 まぁ、私が大地さんを苦手がってるように、大地も私のことが苦手なのかも知れない。
 だから、菊花さんは早く歩くように促したのかも知れない。
 もしくは、まったく違う理由かもしれない。
 やっぱり、世界は分からないことだらけだ。
 いや、そこまで壮大な話でも無いけど。
「……というか、こんなところで突っ立ってないで早く行こう」
 別に食べるものがなくなることはなくてもなるべく美味しい状態で食べたいし。
 そう考えた私は食堂まで二人にギリギリで追いつかない速さで歩くことにした。
 だけど、本当に広い舘だなぁ。
 十分くらい歩いてるのにまだ食堂に着かない。
 ……もしかして、迷った?
「いやいや、いくら大きいからって室内でそんなにほいほい迷うわけが……」
 自分にそう言い聞かせるけど、今まで食堂に行こうとしたときにこの道を通った記憶はない。
 何で二人と別れて数分で迷ってるんだ、私!
「あれ、どうしてこんな所にいるんですか?」
 声色で誰の声かを判断出来たので、さりげなく食堂に案内してもらおうと思うが、その声を出すことは出来なかった。
 その声の主の恰好が私の予想の範疇を超えていたからだ。
「……何で、そんな格好してるんですか?」
「え、何か変ですか?」
 そう言ったのは空さん――この家の長男なのだけど、何故か、メイド服だった。
「いや、さすがにその服装はどうかと思いますよ……」
 空さんに女装癖があるのはこの二日間で十分に知っていたけど、さすがに家を継ごうという人がメイドの格好をしているのはどうなんだろう。
 お金持ちだとそういうことは些細な問題なんだろうか?
「なんというか、この格好が一番落ち着いて……」
 しかし、はにかみながらそう言う姿は下手な女の子よりよっぼど可愛かった。
 一人の女としては複雑な気分になる。
「……あれ。そう言えば篠宮さんは?」
 智ちゃんがいないのが不思議だというような感じで空さんは尋ねてきた。
 ……どうやら、私たちはセットだと思われてるらしい。
「智ちゃんは着替えてから出るって言うんで先に出ちゃいました」
「それで、迷っちゃったんですか」
 空さんはイタズラっぽい笑みを浮かべながら私がさりげなく隠そうとしていた事実を当ててしまった。
 相手が他の誰かなら逆ギレの一つでもしたんだろうけど、空さんの場合はそんな気にならないのが不思議だ。
「それじゃ、一緒に行こうか」
 まぁ、この優しさが原因なんだろうなぁ。
 そんな羨望とも嫉妬とも取れるようなことを考えながら空さんと一緒に食堂に向かった。




 ドラマに出てくるようなこの食堂でも、何回も見ていると流石に飽きるなぁなどという失礼なことを考えながら円状になっているテーブルに置かれている料理とこの場にいる面々を見回す。
 まず、時計の9時に当たる席に座っている大地さん。
 隣の10時に当たる席に座っているのが大地さんの姉で空さんの妹の海里さん。
 そして、手前の6時に当たる席に智ちゃんが座っていた。
「どうして、私より早いの!?」
「それは私の方が聞きたいんだけどね」
 智ちゃんは呆れたようなため息混じりに言った。
 しょうがないじゃん。 私はこんな広い家に来るのは初めてなんだし。
 心の中で文句を言いながら、智ちゃんの右隣に座った。
 それにしても、何で千羽さんや菊花さんたちメイドさんは座らないんだろう。(もちろん、空さんはメイド服を着ているだけで実際にはメイドどころかご主人様に当たるわけだから普通に座っているけど)
「お父様、遅いわねー。何やってるのかしら」
 そう言ったのは海里さんだった。
 不機嫌そうに自分の青い髪を弄っている姿はとても怖い。
「私が見て来ます」
 そう言ったのはこの館のメイド(厳密に言うと菊花さんは大地さん専属のメイドらしい)の紫さんだった。
「あ、あの、私も一緒に行っていいですか?」
 私は思い切って聞いてみた。
 一通り探検したものの、どんな部屋なのか興味があったからだ。
「……それじゃ、私も一緒に行くわ。 また迷子になられても困るしね」
「いくら何でも紫さんと一緒に行って迷うわけないじゃん!」
 私は智ちゃんのボケに会心のツッコミをした。
 私と智ちゃんの付き合いなのでこういうのは打ち合わせがなくても分かる。
 そして、今のボケが本当は私が着いていくのを拒まれないようにしてくれた、というのもよく分かった。
 本当に智ちゃんは素直じゃない。
「……分かりました。それでは、参りましょうか」
 紫さんはそう言って私が入ってきた扉を開けて光輝さんの部屋へと行こうとしたので私たちはその後ろを着いていく。
 道中で思ったことはやっぱり、この館は大きいということと何で紫さんは迷わずに歩けるのか、ということだった。
 いや、この館ではむしろ、迷っている私の方がおかしく感じるくらいなのだ。やっぱり、普段からこんなところに住んでいるとそういう能力が身に付くのかな?
「ここがご主人様の部屋です」
 紫さんはある扉の一つの前で立ち止まって言った。
 少なくとも、扉だけを見る限りでは私たちの部屋と大差ない。
「ご主人様、どうかなされましたか?」
 扉をノックしながら紫さんは部屋にいるであろう光輝さんに声をかける。
 しかし、部屋の中から物音はない。
「……ご主人様、部屋を開けますよ?」
 紫さんはそう言うとメイド服についているポケットの一つから鍵束と取り出して鍵を開けた。
 扉の先にはぎっしりと本を詰めている本棚やよく探偵ものに出てきそうな机がある。
 いや、それ以上に目につくものが一つある。
 でも、出来ることならあまり見たくない。
 真っ赤な血の池と中心にある光輝さんの死体――
「はぁ……」
 智ちゃんはため息を吐くとあっさりと部屋の中に入っていく。
 私も紫さんも動けずにいるというのに、智ちゃんは光輝さんのところまで歩いて行く。
「……またですか?」
 智ちゃんはため息交じりに話しかけた。
 私でも紫さんでもなく、死体に。
 冷静に見えるけど、内心は動揺してるのかな?
 そんな風に考えていると、
「いやぁ、まさかあっさりバレるとは思わなかったよ」
 光輝さんはまるで寝転がっているところから起き上ったみたいに何気なく立ち上がった。
 ……いやいやいやいや、何で、そんなにピンピンしてるの?
「えっと、あの……」
 紫さんも今の事態を飲み込もうとしているけど、何から聞けばいいのか分からないという表情をしていた。
 というか、事情を分かっていそうなのは智ちゃんだけだ。
「……二人とも、驚いてるじゃないですか」
「そりゃあ、驚かす側としては冥利に尽きるなぁ」
 呆れている智ちゃんの言葉に笑いながら返す光輝さん。
 えっと、実は光輝さんは死んでないってことは今のは死んだ振りで……。
 何で、そんなことをしてたの?
「まぁ、そこら辺の説明は後にさせてくれないかな? 先にお風呂に入って綺麗にしたいからね」
 私の考えを読んだかのように、光輝さんはそう言った。
 ……やっぱり、この館にいる人は変な人ばっかりだ。



「つまり、今日もお父様のくだらない冗談のせいで食事の時間が延びたってわけね」
 光輝さんの部屋を出た私たちは食堂に戻って分かる範囲の事情を説明した。
 そして、その結果が今の海さんの一言である。
「こら、まだそうだと決まったわけじゃないでしょ」
 空さんは自分の父親に対してひどいことを言う海さんを叱った。
 でも、その言い方だとまだ確定はしてないから、と言いたいように聞こえる気がしないでもない。
「はっ、あの親父が変なのは今に始まったことじゃねーだろ」
 大地さんも自分の父親なのにひどい言いようだった。
 この3日間、この3人を見ているとあまり光輝さんのことを好きじゃないように見える。
 というか、大地さんと海さんに至っては嫌ってるようにさえ思える。
 でも、3人とも何だかんだ言って逆らってるところを見たことがない。
 まぁ、ほんの一部しか見てないんだからどうなのかは分からないけど。
「まぁまぁ、ご主人さまへの陰口その辺にしまひょ」
 そう言ったのはこの館の料理長の弥生さんだ。
 と言っても、この館に弥生さん以外に料理を出来る人はいないので(手伝いくらいならみんな出来るだろうけど)ほぼ彼女一人で全員分を作っているわけである。
 多分、この中で弥生さんに意見出来る人なんかいないだろう。
 もちろん、冗談だけど。
「そうは言っても、そのせいで貴方の料理の味が落ちたのよ?」
 海さんの怒りは相当なものだ。
 それこそ、自分の作ったもののように怒っている。
「そりゃあ、うちかて美味しゅう食べてもらいたいけど、美味しゅうなくなったらそれはそういうことを考えへんうちのミスや」
 にこやかな笑みを浮かべながら海さんを諭す弥生さん。
 というか、何で料理を作った弥生さんより海さんの方が怒ってるのさ。
「いやぁ、弥生くんの料理は時間が経っても美味しいよ?」
 いつの間にか海さんの後ろにいた光輝さんが言った。
 ……いや、本当にいつの間に入ってきたの?
 気配も足音もまったくなかったんだけど……。
「それに栄養面にも気を遣ってくれているし、弥生くんには頭が上がらないよ。 ほんと」
「そない褒められたら照れますがなー」
 光輝さんの褒め言葉に照れ笑いを浮かべる弥生さんは可愛いなぁ。
「……で、どうしてお父様は遊んでたのかしら?」
 うわぁ。 顔は笑ってるのに声が全然、笑ってない。
 私が怒られてるわけじゃないのに怖いんだけど。
「いやー、これには深ーい訳があるんだよ」
 光輝さんは光輝さんで海さんの期限を逆なでするような言い方をするし。
 やっぱり、この家族は仲が悪いんじゃないかな?
「実は、今朝の内にゲームを考えたんだ」
 光輝さんは急に真面目な顔をして言った。
 元々の顔立ちはいいし、今はタキシード服なんかを着てるせいでかっこよく見える。
 でも、言ったことは「ゲームを考えていた」だから実際はそこまでかっこよくはない。
 というか、何でゲームを考えてあんな惨状になるのか分からない。
 分からないことは嫌いだ。
「まぁ、詳しいことは食べながら話そうか」
 そう言って、光輝さんは智ちゃんの正面に座った。
 誰も「散々、長くしたのはどこの誰だ」とは言わない。
 面倒だっただけかも知れないけど。
「ルールは簡単。 私を殺した犯人を当てればいい」
「……つまり、そんなことのためにわざわざ朝食を遅らせたわけ?」
「そうそう」
 満面の笑みで頷いているけど、周りの視線(特に海さん)は冷たいってことを光輝さんは分かってるんだろうか?
 分かってるとしたら相当な大物だ。
 こんな大きな館に住んでる時点で十分に大物だけど。
「……つっても、推理のしようがねーじゃねーかよ」 
 大地さんがぽつりと呟いた。
 まぁ、死体役である光輝さんも動いちゃってるし、現場である光輝さんの部屋も紫さんが片付けたから推理の仕様がないけど。
「だから、一人三回まで私に質問をして、それにYESかNOで答えるからその3回のうちに犯人を当てられたら勝ち」
「……それじゃ、あれは本当にただの演出だったのね」
 溜息を吐きながら智ちゃんは愚痴をこぼすように言った。
 まぁ、いきなりこんなことになったら当然だと思う。
 というか、話が急すぎてちょっとついていけない。
「ちなみに、当てられたらこの家にあるものなら好きに持って行っていいよ」
「よーし、絶対に当てて見せる!」
 私は思わずガッツポーズをするほど意気込んだ。
 おかげで私まで周りから白い目で見られることになったけど、そんなことは気にならない。
 というか、気にしたくない。
「……それは、犯人役はいきなり「あなたが犯人です」って言われるんですか?」
「実は前もって犯人役にはこういうことをするから犯人役よろしくって言ってあるよ」
 つまり、犯人役の人は前もって知ってるから行動が怪しくなる可能性がある。
 決定的じゃないけど、判断材料くらいにはなるかもしれない。
「あ、それと質問には私の主観で答えるよ。 例えば、「犯人はあなたの家族ですか?」という質問が来たら犯人が篠宮さんかなゆきちゃん以外の場合はYESと答えるよ」
 つまり、迂闊な質問をすると推理も何もなくなっちゃうわけか。
「とりあえず、一通りは説明したし、腹が減っては何とやらと言うしここはそろそろ朝食を食べようか」
 ……いや、まぁ、お腹は空いてるけども。
 私は心の中で「誰のせいで送れたと思ってるの」と言うことしかできなかった。




 弥生さんの作ってくれた料理を言葉で表すとしたら最高だったとしか言いようがない。
 というのも、私の知ってる言葉では正確に表すことが出来そうにないくらいのおいしさだったのだ。
 この館に来て3日も経つというのに、未だにこのおいしさに慣れないとは……。
 私の知る限り、こんなおいしいものを作れるのは弥生さんと智ちゃんの家の料理人たちくらいしかいない。
「そろそろ、ゲームを始めようか」
 唐突に光輝さんは言った。
 いや、もうみんな食べ終わったんだからタイミング的には丁度いいのかな?
「じゃあ、質問を考えた人から私に耳打ちしてくれ」
 一瞬、何でそんなことをしなければならないのか分からなかったけど、そうしないと前の人の質問内容が聞けて有利になることに気づいた。
「んじゃ、俺が一番なっと」
 そう言って、一番初めの挑戦者は大地さんだった。
 こういうことには興味なさそう……というか、本当に興味がないという顔をしているのに一番最初に名乗り出るとは思わなかった。
 何か欲しい物があるにしても、大地さんなら自分で手に入れられそうなものだけど。
「……YES」
「やっぱりな。 そうだろうと思ったよ」
 心底、面倒くさそうな表情をしながらそう言って自分の席に戻る大地さん。
 あれ、質問一つだけ?
「嬢ちゃんとは頭の出来が違うからな」
 私の驚きが顔に出ていたのか、私を見た大地さんは憎たらしい笑みを浮かべながら私を馬鹿にした。
 く、屈辱……!
「次は私が質問します!」
 ここで見返さなければいけないと思った私は即座に名乗りを上げて光輝さんに近づく。
「いやぁ、現役女子高生に耳打ちしてもらえるなんて光栄だなぁ」
 にこやかな顔をして何を言ってるんだ、この人。
 そうツッコミを入れたいのを堪えて私は一つ目の質問をする
「犯人は光輝さんの血縁関係のある人ですか?」
 さっきは「みんな家族だと思っている」って言っていたけど、これならそんな心配はいらない。
「……NO」
 血縁関係はない。
 つまり、残りは千羽さん、紫さん、弥生さん、智ちゃん、私ということになる。
 もちろん、私は犯人役じゃないので残りは4人。
「じゃあ、犯人は男ですか?」
「……・YES」
 よし、これで犯人役は千羽さんで決定だ。
 もう一回質問できるけど、その必要もないので私は席に戻る。
「どうですか、私だって2回で犯人を特定しましたよ」
 私は勝利の笑みを浮かべる。
 少なくとも、これで私がバカじゃないことは証明された。
「その予想が当たってりゃいいけどな」
 しかし、大地さんは相変わらずの憎たらしい笑みを浮かべていた。
 く、屈辱……!
「それじゃ、次は誰かな」
 そうして、次々に光輝さんに質問していき、全員の質問が終わった時に前もって用意されていた紙とペンを紫さんが配る。
 私は何の迷いもなく千羽さんと書いた。
「皆、、書き終わったかな? それじゃ、犯人だーれだ」
 光輝さんの言葉でみんなが一斉に紙を見せ合う。
 皆の紙に書かれていた名前は『宮内 空』だった。
「……何でだー!?」


「ねぇ、いい加減に教えてよぉ……」
 気持ちよく風を切る船に乗りながら私は智ちゃんに何度聞いたか分からない質問をした。
 その度に「自分で考えなさい」と言われていたせいで私の不満は爆発しそうだ。
「……はぁ、何となく何を間違えたのかは分からない?」
「んー、何を間違えたか?」
 私は真面目に考えてみる。
 空さんは女装してたから男じゃないってこと?
 いや、そもそも血縁関係の質問でNOって答えたんだから……あれ、もしかして――
「もしかして、光輝さんと空さんって血縁関係じゃないの?」
「正確に言うなら、あの3人だけどね」
 智ちゃんは特に感情も込めずにそう言った。
「元々は千影さん……母親の連れ子だったの。 数年前に亡くなっちゃったけどね」
 智ちゃんはまるで感情を込めずに言っている。
 でも、言葉には感情が込められていなくても、その目は何か悲しそうなのは気のせいなのかな。
「だから、そこは血縁関係じゃなくて親子関係かどうかで質問すればよかったのよ」
「あ、そうだね……」
 私はもう、そんなことに興味はなかった。
 でも、友達でも踏み込んではいけない場所というのも少なからずある。
 だから踏み込めない。 踏み込まない。
「何が欲しくてあんなにやる気だったのか知らないけど、私に言えばあの館にあるものくらいならあげるわよ?」
「んー……別にいいよ」
「どうして? 私に貸しを作るのが嫌だとか?」
「いや……そういうことしたら智ちゃんの財産目当てで近づいたみたいで嫌じゃん。 友達ってのは対等な関係じゃないと駄目だと思うし」
 私の言葉を聞いた智ちゃんは一瞬、きょとんとしてから急に笑い出す。
「別に、これくらいで……対等じゃなくなるなんてこと、ないのよ?」
 笑いを堪えながら智ちゃんは苦しそうに言った。
 何か、これじゃあ私がものすごく恥ずかしいことを言ったみたいじゃん!
「笑うなー!」
 恥ずかしくなってきた私は怒りの声をあげた。
「ごめんごめん、でも、そういうことを言ったら先週のレストランはどうなるの?」
「それは今月のお小遣いで返すからいいの!」
 でも、智ちゃんが笑ってくれるならこれもいいかな。
 私にとって、地球が出来たことよりも猫があんなに可愛い理由よりも智ちゃんのことが気になる。
 もし、智ちゃんが何かのせいで悲しんでいて、それを解決できるなら――
 他のことなんか分からないままでもいい。
 今の私は智ちゃんと笑いあってればそれで十分だ。
「じゃあ、利息はトイチね」
「鬼畜だー!?」
 どうか、何時までもこんな馬鹿なことをやって笑いあえますように。




 俺は春が嫌いだった。
 俺の名前に含まれている『秋』と比べて『春』は優遇されている気がするのだ。
 春は楽しく、秋は寂しい。
 そんなイメージを持つ人は多いはずだ。
 今、俺の前で散っている桜だって十分に寂しさの象徴になりえるにも関わらず、だ。
 これも秋が別れの季節、だなんて言った奴のせいに違いない。
 そして、もう一つ。
 俺が『春』が嫌いな理由がある。
「あっきー、こんな所で何してるのー?」
 ぼんやりと思考している俺に能天気に話しかけてくる声。
 俺の幼馴染にして春と同じかそれ以上に嫌いな――羽宮春奈の声だった。


 春奈の特徴は良く言いえば世話焼き。
 しかし、大概はやりすぎて鬱陶しがられる。
 こいつと一緒にいて何度イラっとしたことか。
 まぁ、悪意から来てる行為ではないからか敵以上に味方がいるし、スプリングガールなんて割と可愛らしい愛称で呼ばれてたりもする。
 おかげで、基本的に一緒にいる俺はフォールボーイなどと呼ばれる羽目になってしまった。
 スプリングガールはともかく、フォールボーイは普通にダサい。
 しかし、スプリングガールとフォールボーイの名が付けられたその日、不幸にも俺は風邪で休んでいて、登校した日には既に広まっていたために広まることを阻止出来なかったのだ。
 まぁ、最初は若干の抵抗があったものの、好きな奴か嫌いな奴にしか言われなくなったので気にならなくなった。
 好きな奴はちゃんと時と場合を選ぶし、嫌いな奴なら何を言われたって大差ない。
 それに、『落ちる少年』というのはマイナス思考な俺には意外とお似合いな気がする。
「あっきー、また考え事ー?」
 春奈は俺の顔を覗き込みながら不満そうに聞いてきた。
 俺は散歩していただけなのに、春奈は自分の買い物へと付き合わせやがったのだ。
 まぁ、どうせ目的のない散歩だったからいいんだけど。
「あっきーはさ、難しいことを考えすぎだよ?」
「別に難しいことなんて考えてねーよ」
「今だってこの国の不景気をどうやったら改善出来るか考えてるし」
「何で俺がそんなことを考えなきゃいけねーんだよ」
 何で仮にも高校生が友達といるときに国の不景気について考えるんだよ。
 じゃあ、実際に考えていたことはどうなんだとか言われたら何も言い返せないけども。
「つーか、お前は何考えてたんだよ」
 言い返せないから、逆に聞いてみた。
 攻撃は最大の防御である。
「んー、この国の不景気をどうやったら改善出来るか、かな」
「お前が考えてたんじゃねーか」
「だって、あっきーがそのことで悩んでるなら協力しなくちゃって……」
 こいつは、春奈は当たり前のように協力しようとする。
 例え、幼馴染の俺以外であろうと、同性だろうと異性だろうと、優等生だろうと劣等生だろうと、生徒であろうと教師であろうと、知り合いでもそうでなくとも、例外なく手を差し伸べようとする。
 そんなところがあるから、俺は春奈のことを――
「そうだ、買い物が終わったらそのまま屋上に行かない?」

 このデパートの屋上は小さな子供のためのミニ遊園地になっていて、俺や春奈も10年くらい前にはよくここに来て遊んでいた。
 数年前にとても便利なスーパーが近くに出来てから、来なくなったけど。
 少なくとも、数年前の俺達が来れる距離じゃなかったし。
「懐かしいねー」
「そうだな」
 昔はよくここに来て遊んで、あまりに楽しくて帰るときはいつも泣いてた気がする。
 で、その後はいつも春奈に宥められてしぶしぶ帰ったっけ……。
「あっきー、久々に来た感想はどう?」
「なんか、小さいな……」
 別にここが特別小さいわけじゃなく、俺が大きくなったからそう感じるだけだけど。
 それでも、昔は1日あっても回りきれる気がしないほど大きく感じたのに。
「私たちが大きくなったからね」
 そう言う春奈の瞳はどこか遠くを見ていた。
 昔でも思い出してるのかもしれない。
「だからね……」
 そこで一旦、言葉を区切ってから俺の方を見る。
「だから……ね、大丈夫だよ」
 何が、とは聞かなかった。
 多分、先ほど悩んでいたことを指しているのだろうから。
 俺の悩むというほどではない考え事を春奈は俺以上に悩んでいる。
 俺はただ、好きな子のことを考えていただけなのに。
 好きだから嫌い。
 嫌いだから好き。
 いや、そんな難しいことですらない。
 ただ、誰にでも優しい春奈に拗ねているだけなのだ。
 春は誰であろうと癒してくれる。
 それを独占したかっただけなのだ。
 我ながら子供じみている。
「ん、どったの?」
 春奈は優しい笑みを湛えながら俺を見つめる。
「……何でもねーよ」
 いくら落ちようともバネがあれば跳躍できる。
 いくら落ちようとも羽があれば飛翔できる。
 こいつがいてくれる限り頑張れる。
 だから、『みんなの春奈』でいてくれるうちにもっと成長して――告白しよう。
 これが、高校生になってから初めての休みの日の出来事だった。
 
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