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ア行

ふてーきこーしん:馬の骨さん

カ行

マジックカーペット:カイクウさん

一族の廃屋:9Gさん

サ行

みゅーじっく!:銀さん

徒然草:シャウトさん


タ行

愛と憎しみに生きる:高島れんさん

TRANSMIGRATION ~月ノ宮日記~

ナ行

黒猫の自由気ままな日々∞:にゃんちゅーさん

ハ行

遊戯王 King Of Bandit:バクさん

闇の翡翠記:闇のヒスイさん

ハペキモスなチラシの裏:ハーピーさん

柊が語る遊戯王の雑記:柊華ハルさん&八極さん

ペリドットのきまぐれな日々:ペリドットさん

マ行

ヤ行

ゆ~の適当日記Re:

時間(とき)の軌跡:妖さん

ラ行
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「よお」
そうかけた一言をこれほどまでに後悔したことは今の今までなかった。
「ちょうど待っていたところなの。遅くならなくてすみそうだわ。」
あくまでも笑顔。それでいてどこまでも笑顔なのだが、昨日見たバイオレットのそれとは真逆のもの。
「バイオレット・・・・・・じゃない?」
「あら、レディの名前を忘れるなんて失礼でしてよ?」
「ははは・・・・・・」
彼女の言葉が、笑みが、空気が、シロの背中にじっとりとした汗を生み出していく。
できるだけ関わらずに去ろうとするシロにベノムは話しかける。
「このあと時間をとれたりしない?」
「いや、このあとはちょっと」
目線をあわさず、さっさと帰りたいオーラを出しながらしどろもどろに断るシロに彼女は追い討ちをかけるように言葉を続ける。
「故ヒルグ空軍准将の話でも?」
その言葉に歩き始めたシロの足は止まってしまった。
シロの中で思考が渦巻き始める。
昨日トランも父の話をしていた。しかしコガネに遮られて詳しくは聞けなかった。
むしろコガネがいると父の話は遮られてしまうのではないのだろうか、と。
ベノムの話がトランの話と同じなわけがないのだが、父の話は聞いてみたい気がする。
今、コガネはいない。しかしあのベノムと一人で話すのはやはり気が引ける。
「考えるのはいいけれど」
ベノムがつぶやくように言う。
「さっきのは命令で、初めから貴方に拒否権なんてないの」
結局のところ、近くに停まっていた車から出てきた男に、シロは抵抗もできないまま車に乗せられてしまった。
 バキ!! 
 室内に肉体の奏でる音が鳴り響き、それと同時に、一人の少女の体が宙を舞う。その一瞬の出来事に、シロはただ立ち尽くしているしか出来なかった。
「へへへっ。油断なんて“らしく”ないんじゃないのぉ、ベノム~?」
「……何しに来たのよ、ベリアル。ここは私にまかされてたはずよ? 」
 いつの間にか、ベノムの隣に一人の男が立っていた。
 鍛錬場の出入り口は、自分たちの背後、一箇所だけのはずなのに。この男が来たことに全く気がつかないなんて……。
 シロの背中に冷や汗が流れる。つまりは、それほどの“手練”だということになるからだ。
「状況が変わったらしくってねぇ。そう嫌そうな顔をしないの」
「私は一人でやりたいんだけど?」
「まぁまぁ、そんな事いわないでさぁ。一緒に楽しも? ……食べちゃいたいほどのカワイコちゃんがいるじゃない」
 コガネを軽々と吹き飛ばした男は、下卑た笑いを浮かべながらそういった。
「……どっちのことかしら?」
「あらま。まさか本気であそこで腰抜かしている角刈りの事だと思っているんじゃないでしょうね? いくらなんでもそりゃないわ」
「あらそう?」
「えぇ~、俺の事どう思ってんの、全く」
「変態」
「あのねぇ、あの角刈りのどこが『かわいい』の……ってあら? いなくなっちゃってる」
「……あら、意外。ある意味、根性だけはあったのね」
 シロもこの隙にコガネの元に走り寄りたかった。今すぐにでもコガネを抱きかかえ、この場から逃げ出したかった。
 自分たちの与えられた“仕事”はあくまで監視であって粛清では無かったはず。ならば今からでも、この場を生徒会の人に任せるべきなのではないだろうか。
 ここで逃げたって別に後ろめたいことは無いはず。ってか、報告が出来なければ監視していた意味が無いんじゃ……。
 二人が無防備に会話している今が絶好のチャンスだと思っていた。
「…………くっ! どうして!!」
 だが、頭ではそう思っているにもかかわらず、体はまったく動くことが出来なかった。なぜかは知らないが、指一本たりとも動かすことが出来ない。
「…………ふ……二人がかり……だなんて、さすがは……負け犬ね」
 倒れていたコガネが、ゆっくりと体を起こしながら、そういった。
「これで……少しは本気が……出せる……かしら」
「コガネ!? 無茶しちゃ駄目だ」
 心配そうな声を上げるシロ。だがしかし、その体は僅かたりとも動かすことは出来ない。ただ口と顔が動かせるのみ。
「へへへっ。かわいい声で囀るじゃないの。いいねぇいいねぇ」
 ベリアルと呼ばれていた男が、これ見よがしにベロンと舌なめずりをする。
「で、ベノム? あのカワイコちゃんの相手、俺がしてもいいかなぁ?」
「……いっそ後はあなた一人で全部やったら? 私はもうやる気がなくなったから」
「嫌だね、メンドクサイ。俺はあのカワイコちゃんと楽しみたいだけなんだからさぁ」
「……あなた、何しに来たの?」
「ん? ただ「予定が早まった」と伝えに来ただけ。……だったんだけどさぁ、あんなカワイコちゃんを見たらたまんなくなってね」
「そう。…………つくづく、変態ね」
「へへへっ。よく言われる」
 この二人が無駄にしゃべっている隙に逃げ出そうとシロは思った。思ってはいるのだが、実行に移すことが出来ない。なぜだか、その体を動かすことが出来ない。
 自分に纏わりつくようなベリアルの視線が、気持ち悪い。そのあまりの気持ち悪さに、体が拒絶反応を示しているかのようだった。
 ――――喩えるならば、ナメクジに睨まれたヘビのような――――そんな心境だった。
「さて、と。どう楽しもうかなぁ。……ねぇ、どういう感じでやられちゃいたい? そこのかわいい坊や」
「お、俺ぇ?」
 予想外の台詞に、シロは間の抜けた声を上げてしまう。
「当たり前じゃん。俺、女なんか興味ないし。ってか、ぶっちゃけ女なんか皆死んじゃえばよくね?」
「何……勝手なこと……言ってんの……よ」
 肩で息をしながら、立ち上がるコガネ。
「ってかさぁ、あんたウザイ。女なんてキモイだけなんだから、そのまま死んじゃえっての」
「弱い犬ほど……よく吼えるって、言うけど……本当、よくしゃべる……わね」
「あぁん? ナニ言ってんだかこのアマ! ベノム! さっさとアレ殺っちゃってよ」
「……何で私が」
「元々お前の仕事じゃん? 俺はそこのカワイコちゃんとしっぽり楽しんでいるからさぁ」
 ベノムがやれやれ、というように機関銃を構えなおす。
 コガネは苦しそうだし、自分はなぜか指一本たりとも動かすことが出来ない。――――ってことは……今度こそ死ぬ!?
 シロが思わずぎゅっと目をつぶってしまったその時、鍛錬場の入り口から声がかかった。
「2対1だなんて、卑怯ですぅ」
 この場にそぐわない、まるで甘えているかのような舌足らずの喋り声は……。
「ルリ……ちゃん、危ないから……来ちゃ、ダメ」
 シロが反応するよりも一瞬早く、コガネが声の主を制止する。
「嫌ですぅ。お姉さまが苦しんでいるのに、見てみない振りだなんて出来ませんよぅ」
 だがしかし、ルリ、と呼ばれた小柄な少女はトコトコとコガネの近くにまで歩み寄ると、コガネの顔を覗き込んだ。
「大丈夫ですかぁ、お姉さま? あぁ、とってもお顔が苦しそうですぅ」
「わざわざ死にに来るなんて酔狂な人。まぁどうでもいいけどね」
 心底めんどくさそうに、ベノムが機関銃の引き金を引く。毒を付与されている銃弾がコガネとルリに雨あられと降り注ぐ。
 だがしかし、その全てがコガネによって防がれていく。悪意の塊として吐き出され、叩きつけられる弾は、二人の体には一発たりとも当たらずに、周囲に散らばっていく。
「…………まだ防げるのねぇ。本当、弱いくせによく粘るのね」
「弱い、は……よけいよ。ってか、負け犬に……弱いといわれる……なんて、思っても……みなかった……わ」
「この弾が、お姉さまを苦しめているんですねぇ?」
 ルリはそういうと、周囲に落ちた弾を3つ4つ拾って握り締めた。
「それに触っちゃダメだ! 毒があるんだ!!」
 やや遅れて、シロが叫ぶ。
「ご心配なくぅ。……お姉さま、人が見ているけどゴメンナサイ」
 そういいながらルリは手の中の銃弾を足元に捨てる。そして、そのまま両の手をコガネのほほに添え、口付けをする。
「なっ、……」
 真っ赤になりながらも目がそらせないシロ。……いや、その場の全ての人が、二人の行為をただただ唖然として眺めていた。
 チュッ。そんな音と共に、二人の唇が離れる。
「全くもう。いきなりやらなくっても」
「でもぉ、このほうが早いし確実ですぅ」
「待ったくもう、ルリったら。……まぁ今回だけは多めに見てあげるわ」
「えへへ。でも、これでお姉さまと私で2対2ですぅ。あんな人たち、早くやっつけちゃいましょうよぉ」
 空になった弾倉を交換し終えたベノムが、あきれたように呟く。
「あの子、あなたと同類のようね? ベリアル」
「へへへっ。バカいっちゃいけない。俺は女になんか興味ないもんね。やっぱり、男が一番さぁ」
「……そう。私にはどう見ても同類に見えるんだけど」
「むぅ。汚らしい男なんて、興味ないですぅ! そんな変態さんと一緒にしないでください!!」
 まぁどうでもいいわ、とベノムは呟く。
「ねぇ、ベリアル。あのちっちゃいのを任せてもいい? 彼女、毒を中和しちゃう様だから」
「えぇー。メンドイ」
「片付けたら、後はあなたの好きにしていいから」
「へへへっ。坊やをテイクアウトしても?」
「えぇ。上にもいわないであげる」
「よっしゃ。なら早いとこ小生意気な女を片付けますか。……待ってろよ? カワイコちゃん。すぐに終わらせるからさぁ」
 そういうとベリアルはシロに向かってウインクを投げかけてくる。
「なによぉ、お姉さまがあなたたちなんか、すぐに片付けてくれるんだからぁ!」
「そうね。これ以上ルリちゃんの手を煩わせるのもなんだから、二人まとめてかかっていらっしゃい」
「……あなたこそ一人で大丈夫? その子をかばっている余裕なんてあるのかしら」
「へへへっ。たった2人だけで俺とやりあうって? これだから女ってのはバカなんだよなぁ」
 それぞれの視線が交差し合い、見えない火花を散らす。場の空気が張り詰めていく。一瞬でも弱気になったほうが、負ける。
 そんなことを肌で感じながらも、シロはなすすべも無く立ち尽くす事しか出来ないでいた。
(畜生、俺に出来ることはないのかよ。このままじゃ、また……)
 シロが諮詢をしている間に、コガネが先手をきって呪文の詠唱を始める。周囲の空間に、凛としたコガネの声が拡がる。
「――――なっ、おい! いくら鍛錬場だからって……」
 いつもは無詠唱で魔法を行使するコガネが呪文の詠唱を始める。ということはすなわち、それほどの魔法を使うつもりだということである。
 コガネの紡ぐ詠唱が、周囲に濃密な魔法力場を形成し始める。だがしかし、ベノムもベリアルも意に介した様子はない。
「ふぅん。どうやら本気で来るようね。なら、私も」
 ベノムの呟きと共に、彼女の抱えている機関銃が淡く輝きだす。
「な、なんだって!?」
 あまりの出来事に、シロが驚きの声を上げる。
 そこへ新たな呪文詠唱の声が被さる。周囲に満ち溢れているコガネの声に寄り添うような、たおやかな響き。
「ちょっ、ルリちゃんまで。ってか、ひょっとしてこれって、合成魔法詠唱!?」
 シロが戸惑っている間にも、2人の紡ぎだす詠唱が鍛錬場の中を幾重にも満たしていく。
「ちょっとまって、皆。このままじゃあ……」
 だがしかし、シロの上げた制止の声は、新たなラウンドの開始を告げることにしかならなかった。
「待て待て、お前はどうしてそんなにすぐに手を出そうとするんだ。」
 張り詰めた空気に耐えかねたのか、シロが口を挟む。
 しかし、コガネはそんな少年に一瞥もくれることなく、
「あんな敵意をぶつけてくるような奴相手にこれ以外の選択肢なんてありえる?」
 そう言いながらベノムに対して敵対心を剥き出しにして睨み付けている。
 ベノムはそれを無表情のまま見つめながら、手に持つ機関銃を構える。
「ちょ、お前も―――」
 ベノムはシロが言い切る前に機関銃のトリガーを引き、百を超える弾丸をコガネに向かって発射する。
 しかし、それらは今度も一発たりともコガネに当たることはなく、落ちていく。
「これで終わり?」
 コガネは挑発するように、不敵な笑みを浮かべる。
「し、死ぬかと思った……」
 隣にいたシロは2、3歩後ずさりして、そう呟く。
「……確かに、少しはやるみたいね」
 ベノムはコガネに触れることさえなく役目を終えた弾丸を見ながら表情を変えずに呟いた。
「だけど、もう遅い」
「何を……」
 「言ってるの?」という言葉は出なかった。
 正確に言えば、出せなかった。
 その身体が激痛によって倒れたからだ。
「コガネ!?」
「あなたが触った弾丸には私の魔法で毒を付加していたのよ。もっとも、手で触っただけだから発動まで少し時間がかかったけど」
 残虐な笑みを浮かべながら、楽しそうに説明をしている。
 シロはそんなベノムを無視し、コガネを助ける方法を考えていた。
 シロはもちろんのこと、コガネであろうと毒の種類さえ分からない状況では治し様がない。
 もし、下手に治そうとして失敗すれば、コガネがどうなるか分からない。
 生徒の情報を把握している生徒会や教師であれば、どのような毒か理解していて治せるかも知れない。
 しかし、助けを呼びに行こうとすればベノムがそれを阻むだろう。
 もはや、万策尽きていた。
 それでも、シロはどうすればいいのか考えていた。
「あぁ、安心して。死ぬことは無いから」
 思考しているシロと苦痛に顔を歪めているコガネに向かって、ベノムは喋りかける。
 シロは本当のことだろうと思う。
 先ほど撃たれたはずの不良たちがその証拠だ。
 しかし、それは痛みが弱いことと同義ではない。
 むしろ、死なせず気絶もさせずに苦痛を与え続ける。
 最初から、殺す気はない。
 ただ、嬲るだけ。
「(何でこんな危ない奴を入学させてんだよ!)」
 シロは心の中で叫ぶ。
 さすがに、これは不良などと言う範疇ではない。
 もはや、犯罪者と言っても差し支えないほどである。
「……何か喋り返してくれないとつまらないじゃない」
 ベノムは溜め息を吐き、がっかりしたような声で呟いた。
「……何で、こんなことをしたんだよ」
 しかし、シロはベノムの言葉を無視して訊く。
「何で……?あぁ、それは群れていたからよ」
 一瞬、何を指してるのか分からないと思いながらも、すぐ近くで倒れている不良たちを見て理解し、何のことはないという風に理由を述べた。
 あまりに何気なく言ったので、シロは一瞬、何を言ってるのか理解できなかった。
 ゆっくりと頭の中で反芻し、ベノムの言ったことを理解する。
「てめぇ……!」
 声を上げたのはシロではなく、角刈りの少年だった。
 恐らく、倒れている内の何人かは彼の仲間なのだろう。
「ロクに動けなかった負け犬さんが何かしら?」
 ベノムは楽しそうに角刈りの少年に毒舌をふるう。
「テメェに……テメェに何が分かる!」
 そう言うと、角刈りの少年は胸元のポケットからナイフを取り出そうとする。
 当然、それに反応してベノムの銃口は角刈りの少年へと向けられる。
「あなたが向かってくるのと、私が引き金を引くのはどっちが早いかしらね?」
「くっ……!」
 勝負は最初から分かっていた。
 もし、敵うと思っていたのなら最初から抵抗していたのだから。
「まったく、そこでやめたらつまらないじゃ……」
 ベノムは言いかけて、止まった。
 毒で倒れていたコガネが立ち上がったからだ。
「やっと……毒にも慣れてきたわ……」
 コガネは小さく呟いた。
 その動きは鈍く、フラフラしている。
「なっ、大丈夫なのか!?」
 シロは驚きのあまり大きな声でコガネに問う。
「当たり……前じゃない。むしろ……ハンデ……には丁度……いいわ」
 痛みに耐えながら、それでも、軽口を叩く。
 もう、周りの不良のように倒れてもおかしくないはずなのに。
 バランスを何度も崩しかけながらも、立っている。
「私の毒を喰らってまだ立っていられるなんて、すごいじゃない」
 素直に感心をしたというような声音でコガネを褒め、拍手までした。
 先ほどから追撃しないのも、全ては3人を舐めているからだ。
 角刈りの男は固まって逃げることさえ出来ず、邪魔をしに現れた二人にしても一人は手負いで一人は何もしてこない。
 絶対的優位に立っているベノムにとっては、あえて追撃せずに弱っていく様を見ている方が面白いだろうと判断したからだ。
 鼠ではどう足掻こうと猫には勝てない。
 例えば、先ほどの不良たちにとってのベノムのように。
 あまりに差がありすぎて、一矢報いることは出来ても、倒すことなど到底不可能である。
 それは概ね正しい。
 ただ、間違いがあるとすれば―――
「そこの……不良、ナイフくらい……持ってるん……でしょう?貸し……なさい」
 有無を言わさないような物言いに竦んだのか、あるいは、自分と違い戦おうとする姿に何かを思ったのか、胸ポケットにしまってあったナイフを取り出し、コガネに渡す。
 コガネはそのナイフを受け取ると、右手に持ちゆっくりと掲げようとする。
「何?まさか、そのナイフを投げるのかしら?」
 ベノムは笑いながら、まだ機関銃をコガネに向けようとはしない。
 彼女にとって、無いに等しい希望に縋って抵抗する姿は至高のものだった。
 その点で言えば、角刈りの男や何故か頬の腫れている少年にはガッカリしていたが、もっと追い込めば行動するだろうと思っている。
 だから、少女のことを嬲り終わったら次はどのようなことをしようかと考えていた。
 仮にも、戦闘中であるというのにも関わらず、油断しきっていた。
「そろそろ、終わらせ……ましょうか」
 コガネはそう呟くと、弱ってるとは思えないような速度でナイフを思いっきり投げつけた。
 振った。というよりは何らかの力によって強引に腕を振るわされたかのようだった。
 当然、そんな大雑把な投げ方ではまともに当たるはずはなかった。
 しかし、予想外の行動と速さに驚き、反射的に銃を振るうことによる防御を行ってしまった。
 それによって、銃口は壁を向き、攻撃も防御もロクに出来なくなってしまった。
 そして、ベノムは見た。
 コガネが何らかの力によって吹っ飛ばされるかのようにこちらに向かって来る姿を。
 そして、左手を思いっきり引き、握りこぶしを作っている姿を。
 もう、防御も回避も間に合わない。
 そう確信したときには、コガネは自分の全ての力を使って左腕を押し出していた。


 

舞 の発言:
……はぁ
真理 の発言:
……どうしたの?
舞 の発言:
ん、――ちゃん……
真理 の発言:
何か、あった……?
舞 の発言:
……え、と……
舞 の発言:
……や、た、大したことじゃないよ?
真理 の発言:
舞は分かりやすい……
舞 の発言:
え……
真理 の発言:
今、泣きたそうな目をしてる……
舞 の発言:
そ、そうかな……?
真理 の発言:
そう
舞 の発言:
そう……なんだ
真理 の発言:
話すの……嫌……?
舞 の発言:
そ、そんなんじゃ……ないけど
舞 の発言:
で、でも……――ちゃんに迷惑かけちゃうし、ほ、ほんとに大した問題じゃないんだよ? 私が……
舞 の発言:
……
真理 の発言:
(平手で頬に触る
舞 の発言:
ん……だいじょうぶ……
舞 の発言:
だいじょ……うぶ……
真理 の発言:
私は、舞のそんな顔を見るのが、辛い……
真理 の発言:
だから、話してくれると……嬉しい
舞 の発言:
……う、ん
舞 の発言:
…………
舞 の発言:
……ごめん、やっぱり、今、泣きそう……かな
真理 の発言:
(頭を撫でる
舞 の発言:
っ……
舞 の発言:
……あは、やっぱり、泣いちゃった……
舞 の発言:
ごめ、んね……ごめんね……――ちゃ……めい……わく……
真理 の発言:
私は、迷惑だとは思っていない
真理 の発言:
むしろ、嬉しいと……思ってる
舞 の発言:
……ん(袖をぎゅっと掴む
真理 の発言:
よしよし……(頭を撫でる
舞 の発言:
……あぅ
真理 の発言:
悲しくなったら、遠慮せずに、頼って欲しい
真理 の発言:
だって、友達、だから……
舞 の発言:
……うん、ありがと、――ちゃん。ちょっと、落ち着いた……かな
真理 の発言:
それはよかった
舞 の発言:
ん……あのね、――ちゃん
舞 の発言:
ちょっとだけ、悩み事を聞いてくれる?
真理 の発言:
(無言で頷く
舞 の発言:
ん……と、じゃあ……
舞 の発言:
(どうやって話そうかな、かな。桜ちゃんと付き合っていることは、一応秘密にしたいし……)
舞 の発言:
あの、ね。えぇっと……
舞 の発言:
朝って、ちょっと眠い……よね?
真理 の発言:
……?私は、いつも辛くないけど……
舞 の発言:
……あぅ。そ、そうなんだ
真理 の発言:
うん
舞 の発言:
んー……
舞 の発言:
あ、あのね。えと……わ、私の悩みは……
真理 の発言:
(じっと見つめる
舞 の発言:
……あ、朝……
真理 の発言:
朝……?
舞 の発言:
……起きられないこと、なの
真理 の発言:
!……?
舞 の発言:
(……あぅ、ふ、不思議がられている)
舞 の発言:
え、えーとね、私、朝に弱くって、目覚ましとか設定してもその、いつの間にか二度寝
舞 の発言:
とか……しちゃっていたり……
舞 の発言:
そ、それで遅刻しそうになって、今日、さ……と、友達を待たせちゃって
真理 の発言:
友達は……何て……?
舞 の発言:
え……と
舞 の発言:
私のせいで、遅刻しそうになった……って感じのことを言っていた、かな
真理 の発言:
よく、分からないけど……
真理 の発言:
それは、本気で……怒ってたの?
舞 の発言:
……んと
舞 の発言:
呆れてため息を吐いていたから……
舞 の発言:
たぶん、結構怒っていたと思う。口もあまりきいてくれなかったし……
真理 の発言:
その人のこと、あまり知らないけど……多分、大丈夫……だと思う
舞 の発言:
そ、そうなの?
真理 の発言:
本当に、気にするなら……待たないと、思うし……
舞 の発言:
……あ
舞 の発言:
(……そっか。なんだかんだいって桜ちゃん、私が起きるまで待っていたから……遅刻しそうになったんだ)
舞 の発言:
で、でも、やっぱりそういうのって、だらしないし……
真理 の発言:
気に、してるなら……少しずつ直せば……いいと思う
舞 の発言:
……うーん、そうなのかな……
真理 の発言:
そう、だよ……
舞 の発言:
(……確かに、桜ちゃんってそういうこと、あんまり気にする人じゃないような……)
舞 の発言:
(……でも、そうしたら……なんで、機嫌悪かったんだろ、桜ちゃん)
舞 の発言:
(……なんか、他に私の悪いところとか……)
舞 の発言:
あ、あのね、――ちゃん。
真理 の発言:
何……?
舞 の発言:
――ちゃんから見て、その……わ、私のダメなところで許せないところって、ない?
真理 の発言:
……?
舞 の発言:
えと……もしかしたら、そのせいでその人の機嫌が悪くなったのかも、って
真理 の発言:
機嫌が、悪くなる前を思い出せば……
舞 の発言:
悪くなる前……
舞 の発言:
……えーと
舞 の発言:
(私を起こしに来て……それで……パ、パジャマを……)
舞 の発言:
……///
真理 の発言:
どう、して……赤く……?
舞 の発言:
え、い、いやその……な、なな、なんでも……
真理 の発言:
……?
舞 の発言:
(ううっ、パ、パジャマを脱がされたなんていえないよ……)
舞 の発言:
な、なんでもないよ……うん。なんでもない
真理 の発言:
そう……?
舞 の発言:
うん、ほんとに……なにも……///
真理 の発言:
それ、なら……いいけど……
舞 の発言:
(でも、本当になんで……あっ)
舞 の発言:
(も、もしかして私……太ってるって思われた!?)
舞 の発言:
(ヨロッ
真理 の発言:
どう、したの……?
舞 の発言:
あ、えっと……ちょ、ちょっと眩暈が……
舞 の発言:
(そっか、だからパジャマ脱がした時に……)
真理 の発言:
保健室、行く……?
舞 の発言:
(保健室……か。こっそり体重はかるとか……い、いやいや、なに考えているの、私!?)
真理 の発言:
……?
舞 の発言:
(今、昼休みだから……時間的には、まだ余裕がある……よね)
舞 の発言:
(……気になったままだと授業に集中できないかもだし……行って、誰もいなかったらこっそり計ろうかな……)
舞 の発言:
ん、ちょっと、念のために行っておこう、かな……
真理 の発言:
ん、分かった……
舞 の発言:
うん……じゃあ、行ってくるね
真理 の発言:
行ってらっしゃい……
舞 の発言:
……あ、――ちゃん
真理 の発言:
……ん?
舞 の発言:
……ありがとっ
真理 の発言:
……ん
真理 の発言:
どういたし、まして……
舞 の発言:
じゃあ、あとでね(手を振る
真理 の発言:
うん、また……後で……
第0話

第1話(前編)

第1話(中編A)

第1話(中編B)

第1話(後編)

☆キャラクター紹介


S。舞の彼女。
得意技はアイアンクロー。
胸が大きくないのか小さいのかは読者の妄想で。


M。桜の彼女。
朝は弱い。胸は大きい

恵里
元気娘。真理の姉。
桜のクラスメイト。
百合という単語に違和感を覚える程度には常識人。
しかし、女子高で百合に理解がないとか何なの?(ぁ

真理
クーデレ。恵理の妹。
正直、これ以上彼女を説明できない。私の役だけど。

☆その他色々
桜舞い散る。という書き始めた時点では時期にあった言葉から取った。
と言いつつ、実はSとMの頭文字。
舞の発言:
(コンコン
舞の発言:
失礼します――って、あれ? 誰もいない…?
舞の発言:
(…昼休み、だからかな。でも、ちょっと好都合…なのかな?)
舞の発言:
体重計は――えぇっと…
桜の発言:
はぁ、――のせいで憂鬱だわ…(扉を開ける
舞の発言:
…え?
舞の発言:
さ、桜ちゃん…?
桜の発言:
舞…?どうして、ここに…?
舞の発言:
あ、えと…ちょ、ちょっと体調悪くなっちゃって…
舞の発言:
(た、体重測りに来たなんて言えないよね…)
桜の発言:
そう…
舞の発言:
さ、桜ちゃんは?
桜の発言:
私は――がうるさいから、こっちに避難してきたのよ
舞の発言:
あ、あはは、なんていうか、――ちゃんって元気だよね。
桜の発言:
えぇ、あのエネルギーが頭に回れば、さぞや日本に貢献出来たでしょうに
桜の発言:
まったくもって、残念だわ
舞の発言:
う、うーん…で、でも、――ちゃんが元気だと皆元気になるよね
桜の発言:
そう?私はかなり生気を奪われてる気がするけど
舞の発言:
そ、そうなの?
桜の発言:
えぇ、しかも、今日は気分も悪くなったわ
舞の発言:
…?
桜の発言:
何でも……ないわ
舞の発言:
桜ちゃん…?
桜の発言:
そんなことより、言いたいことがあるのよ
舞の発言:
…え?
舞の発言:
(な、なに…かな…って、やっぱり、朝のこと…だよね)
桜の発言:
さっきは、ごめんなさい(深々と頭を下げる
舞の発言:
…え? さ、さくら、ちゃん?
桜の発言:
さっきは少し、調子に乗りすぎたと思っているわ
舞の発言:
さっき…って
舞の発言:
も、もしかして…朝の?
桜の発言:
そうよ
舞の発言:
あ、朝…の…(赤面
桜の発言:
そうよ
舞の発言:
…///
舞の発言:
あ、あの、桜ちゃん…
桜の発言:
なに?
舞の発言:
え、えっと…ね
舞の発言:
そ、そんなに嫌じゃない、から…
桜の発言:
…?
舞の発言:
あ、う…その…
舞の発言:
わ、私は、桜ちゃんのこと、その、だ、だだ、だいす…きだから…
舞の発言:
そーいうことされても、その…なんていうか(ごにょごにょ
桜の発言:
…じゃあ、さっきは何でぼうっとしてたのよ
舞の発言:
え…そ、それは…
舞の発言:
…桜ちゃんに、嫌われたかもって…
桜の発言:
…待って、一体、何のことを言っているの?
舞の発言:
だ、だって!
舞の発言:
桜ちゃん、あの後黙り込んじゃったし、ため息も…
舞の発言:
わ、私、寝ぼけていたから、あきれられたんだって思って…それで…
桜の発言:
…あの時、私は呆れたんじゃなくて――
桜の発言:
その、胸が大きいと……
舞の発言:
…へ…?
舞の発言:
む、む…ね…?
桜の発言:
…そうよ
舞の発言:
わ、わたしの…?
桜の発言:
…何?全部言わせる気?
舞の発言:
あ、あう…えっと…
舞の発言:
…そ、そうだった、んだ
桜の発言:
…えぇ、そんなこと、よ
舞の発言:
……
舞の発言:
…あ、あのさ、桜ちゃん
桜の発言:
…何?
舞の発言:
ま、間違ってたらごめん。でも…
舞の発言:
…もしかして、胸の大きさとか気にしてるの?
桜の発言:
…何?私じゃあ気にしてたらキリがないとでも言いたいの?
舞の発言:
そ、そーゆうのじゃなくて…
舞の発言:
その…桜ちゃん、スタイルいいし…
舞の発言:
む、胸だって、その…えと…綺麗っていうか…あの…(ごにょごにょ
舞の発言:
だ、だからっ、あの、ぜ、全然気にしなくても――
桜の発言:
…なんかムカつくわね
桜の発言:
何をすればこんなに大きく育つのかしら(揉む
舞の発言:
ひゃうっ!?
舞の発言:
あ、ちょっ、や、やめっ、桜ちゃ…こ、ここ学校…!
桜の発言:
そうね、今はこれくらいで勘弁してあげるわ
舞の発言:
あう…///
舞の発言:

舞の発言:
…今、は?
桜の発言:
えぇ、今は
舞の発言:
……
舞の発言:
あの、桜ちゃん?
桜の発言:
何?
舞の発言:
い、いや、な、なんでそんなに嬉しそうな顔しているのかなぁって…
桜の発言:
…そうかしら?
舞の発言:
う、うん、なんか…その…今までにないぐらいに嬉しそうな…ような…
桜の発言:
そう…かもね
舞の発言:
…あ、あの桜ちゃん?
桜の発言:
…何?
舞の発言:
えーと…な、なんでずっと私のこと見ているのかなーって…
桜の発言:
…可愛いから?
舞の発言:
…あう
舞の発言:
(…何か、桜ちゃんの目がちょっと怖い気がするけど…気のせい、なのかな)
舞の発言:
キーンコーンカーンコーン
舞の発言:
…あ
桜の発言:
授業、始まるわね
舞の発言:
い、急がなきゃ…
桜の発言:
じゃ、またあとで
舞の発言:
う、うん…あ
舞の発言:
あの、桜ちゃん
桜の発言:
何?
舞の発言:
えと…私、朝とか苦手だけど…
舞の発言:
が、頑張って起きれるようにするから、その…(もじもじ
舞の発言:
嫌いに…ならないでね…?
桜の発言:
…どうしようかしらねぇー
舞の発言:
はう…
桜の発言:
冗談よ
舞の発言:
ほ、ほんと…?
桜の発言:
ほんとよ、私が舞を嫌いになるわけないじゃない
舞の発言:
よ、よかったぁ…(パァァ
桜の発言:
…舞も、私のことを――
舞の発言:
え…?
桜の発言:
何でも、ないわ…
舞の発言:
…あ
舞の発言:
さ、桜ちゃんっ!
桜の発言:
…何?
舞の発言:
あの、その、わ、私も…
舞の発言:
私も、桜ちゃんのこと…大好き、だよ
桜の発言:
…ありがと(なでなで
舞の発言:
…えへへ
舞の発言:
あ、そ、そろそろ授業始まっちゃうから…
桜の発言:
そうね。…早退しちゃう?
舞の発言:
へ?
桜の発言:
冗談よ
舞の発言:
…そ、そうだよね。あはは…
桜の発言:
それじゃ、また後でね
舞の発言:
う、うん、それじゃ…(小走りで去る
?の発言:
…(保健室向かい側の教室
恵里の発言:
…え、えらいこっちゃ…
 俺は春が嫌いだった。
 俺の名前に含まれている『秋』と比べて『春』は優遇されている気がするのだ。
 春は楽しく、秋は寂しい。
 そんなイメージを持つ人は多いはずだ。
 今、俺の前で散っている桜だって十分に寂しさの象徴になりえるにも関わらず、だ。
 これも秋が別れの季節、だなんて言った奴のせいに違いない。
 そして、もう一つ。
 俺が『春』が嫌いな理由がある。
「あっきー、こんな所で何してるのー?」
 ぼんやりと思考している俺に能天気に話しかけてくる声。
 俺の幼馴染にして春と同じかそれ以上に嫌いな――羽宮春奈の声だった。


 春奈の特徴は良く言いえば世話焼き。
 しかし、大概はやりすぎて鬱陶しがられる。
 こいつと一緒にいて何度イラっとしたことか。
 まぁ、悪意から来てる行為ではないからか敵以上に味方がいるし、スプリングガールなんて割と可愛らしい愛称で呼ばれてたりもする。
 おかげで、基本的に一緒にいる俺はフォールボーイなどと呼ばれる羽目になってしまった。
 スプリングガールはともかく、フォールボーイは普通にダサい。
 しかし、スプリングガールとフォールボーイの名が付けられたその日、不幸にも俺は風邪で休んでいて、登校した日には既に広まっていたために広まることを阻止出来なかったのだ。
 まぁ、最初は若干の抵抗があったものの、好きな奴か嫌いな奴にしか言われなくなったので気にならなくなった。
 好きな奴はちゃんと時と場合を選ぶし、嫌いな奴なら何を言われたって大差ない。
 それに、『落ちる少年』というのはマイナス思考な俺には意外とお似合いな気がする。
「あっきー、また考え事ー?」
 春奈は俺の顔を覗き込みながら不満そうに聞いてきた。
 俺は散歩していただけなのに、春奈は自分の買い物へと付き合わせやがったのだ。
 まぁ、どうせ目的のない散歩だったからいいんだけど。
「あっきーはさ、難しいことを考えすぎだよ?」
「別に難しいことなんて考えてねーよ」
「今だってこの国の不景気をどうやったら改善出来るか考えてるし」
「何で俺がそんなことを考えなきゃいけねーんだよ」
 何で仮にも高校生が友達といるときに国の不景気について考えるんだよ。
 じゃあ、実際に考えていたことはどうなんだとか言われたら何も言い返せないけども。
「つーか、お前は何考えてたんだよ」
 言い返せないから、逆に聞いてみた。
 攻撃は最大の防御である。
「んー、この国の不景気をどうやったら改善出来るか、かな」
「お前が考えてたんじゃねーか」
「だって、あっきーがそのことで悩んでるなら協力しなくちゃって……」
 こいつは、春奈は当たり前のように協力しようとする。
 例え、幼馴染の俺以外であろうと、同性だろうと異性だろうと、優等生だろうと劣等生だろうと、生徒であろうと教師であろうと、知り合いでもそうでなくとも、例外なく手を差し伸べようとする。
 そんなところがあるから、俺は春奈のことを――
「そうだ、買い物が終わったらそのまま屋上に行かない?」

 このデパートの屋上は小さな子供のためのミニ遊園地になっていて、俺や春奈も10年くらい前にはよくここに来て遊んでいた。
 数年前にとても便利なスーパーが近くに出来てから、来なくなったけど。
 少なくとも、数年前の俺達が来れる距離じゃなかったし。
「懐かしいねー」
「そうだな」
 昔はよくここに来て遊んで、あまりに楽しくて帰るときはいつも泣いてた気がする。
 で、その後はいつも春奈に宥められてしぶしぶ帰ったっけ……。
「あっきー、久々に来た感想はどう?」
「なんか、小さいな……」
 別にここが特別小さいわけじゃなく、俺が大きくなったからそう感じるだけだけど。
 それでも、昔は1日あっても回りきれる気がしないほど大きく感じたのに。
「私たちが大きくなったからね」
 そう言う春奈の瞳はどこか遠くを見ていた。
 昔でも思い出してるのかもしれない。
「だからね……」
 そこで一旦、言葉を区切ってから俺の方を見る。
「だから……ね、大丈夫だよ」
 何が、とは聞かなかった。
 多分、先ほど悩んでいたことを指しているのだろうから。
 俺の悩むというほどではない考え事を春奈は俺以上に悩んでいる。
 俺はただ、好きな子のことを考えていただけなのに。
 好きだから嫌い。
 嫌いだから好き。
 いや、そんな難しいことですらない。
 ただ、誰にでも優しい春奈に拗ねているだけなのだ。
 春は誰であろうと癒してくれる。
 それを独占したかっただけなのだ。
 我ながら子供じみている。
「ん、どったの?」
 春奈は優しい笑みを湛えながら俺を見つめる。
「……何でもねーよ」
 いくら落ちようともバネがあれば跳躍できる。
 いくら落ちようとも羽があれば飛翔できる。
 こいつがいてくれる限り頑張れる。
 だから、『みんなの春奈』でいてくれるうちにもっと成長して――告白しよう。
 これが、高校生になってから初めての休みの日の出来事だった。
 
 夕暮れ時。それはこの慶昴国立魔法学園においては、ほとんど生徒が各々の宿舎へと戻り、また一部の勤勉な生徒が学内の資料庫で書物をたしなんでいるような時間帯である。
 明日の授業に備えてゆっくりと休むか、少しだけある余裕を利用し、自らの心を引かれるような書物と向き合うか。そのどちらを選ぶかは自由であり、なおかつそれが健全なる魔法学園の生徒達のライフスタイルなのである。
 だが、当然のように――と言うと多少なりとも不条理に思えるが、世界には異端分子(イレギュラー)というものが、何かしらの形で発生する。この魔法学園の場合、その異端分子というのは……血の気の多い、喧嘩屋――オブラートに包んで物を言えば、実技の授業が楽しくてたまらなく、授業だけでは物足りないと感じ、放課後にも実技を行うべく連日鍛錬場に居座っているという、なんともまぁ元気溌剌な連中のことを指す。
 彼ら、あるいは彼女らは終始馬鹿騒ぎをしつつ、適度に、時には過激なまでに打ち合い、己の能力を高めることなどいざ知らず、場合によっては純粋に鍛錬のために来ているような心身ともに健全な学生にもつっかかり、それがトラブルを招くこともある。
 そして、今日も例によって例のごとくというか、鍛錬場ではやはりトラブルが起きていた。



 繰り返すようではあるが、今日も鍛錬場ではやはりトラブルは起きていた。
 だが、今回のトラブルは「普通」ではなかった。そもそも「普通」ではないようなことが起こるからこそトラブルが発生するのだから何かおかしな物言いのようであるが、とにかく、それは「普通」ではなかった。
「……」
 ゆうに十数人が一度に運動することができるような密閉空間の中で、角刈りの、少し大柄な男子が生唾を飲みつつ、後じさりをしていた。
 彼の周辺は、当然のごとく静かではなかった。それもそのはずで、ここは鍛錬場であり、鍛錬をする場所である以上、生徒達が魔法などで打ち合いをするため、詠唱、あるいは対峙している相手の様子見をしている時の静かな呼吸で、この場は満たされていて当然なのである。大抵の場合、そこには異端分子たる不良達の馬鹿騒ぎも加わるため、鍛錬場はいい意味でも悪い意味でも、騒がしくて当然なのであった。
 だが、という接続詞から始まる言葉の流れを、その男子は心の中で作った。
「(だが、今は……「静か」だ)」
 もう一度言おう、彼の周辺は静かではなかった。それで当然だ。が、普段と比較すれば、今現在――そこかしこから呻き声が聞こえてくるという状況は、相対的に言って「静か」であるとも言えた。
 角刈りの男子は、ゆっくりと自分の足元から左前方に視線を移す。そこでは赤髪の男子が、痛みからか、時折肩を震わせながら倒れ伏していた。さらに言えば、彼のような状態である不良数人がそこら中で転がっているというのが、今現在の鍛錬場の状況なのであった。
「(……ばけもんだ)」
 今更ながらに事の重大さに気付いて、角刈りの男子は脂汗を浮かべる。間違いなくそれは恐怖による極度の緊張からなるものであり、そして彼の恐怖の対象は、静かに、しかし圧倒的な存在感を持って、空間の中央にて君臨していた。
――空間の君臨者たるその存在は、長い、紫色のロングストレートという出立ちの少女であった。
「……満足?」
 つまらなさそうに、あるいは気だるそうに少女はポツリと呟いた。それは何の変哲もない普通の言葉ではあったが、角刈りの男子を震え上がらせるには充分すぎる言葉であった。
 おそるおそる、男子はその少女へと視線向ける。少女はその細い左腕に黒光りをする長身の物体――角刈りの男子は知る由もなかったが、機関銃と俗称されるものを、片手で持っていた。
「ねぇ」
 何の気なしの問いかけ。答えを促していることに気付いた男子はその事実に焦り、冷や汗をダラダラと流し、そしてようやくぎこちない動きでゆっくりと頷く。
 それに対し、少女は、へぇ、とまるで感情のこもっていない感嘆詞を口にしながら、
「そっちはそれで満足なんだ。なら、よかったね……って言ってあげたいところだけど」
 ゆっくりと銃口を向けながら、少女は天使のように優しい残酷さを持つ笑みを浮かべ、
「あたしは、まだ満足していないのよ」
 悪魔のごとく容赦なしに引き金を引いた。



「――」
 機関銃から銃弾が何発か発射される。それらは瞬きをするよりも早く獲物までの距離を詰めていき、正確無比に着弾し、獲物を仕留める……はずであった。
「――なに、あなたは?」
 やはりつまらなさそうに、紫色の髪をした少女は突如の乱入者に問いかける。その乱入者は見事な金髪の縦ロールをした、毅然とした態度を持つ少女であった。
 その少女はゆっくりと、しかし見せびらかすかのように魔法で作った障壁で受け止めた銃弾をつまんでみせながら、
「それはこっちの台詞だわ、1‐Cクラスのベノムさん。ここは鍛錬室であって、戦場ではないのよ? ……なんでそんな物騒なものを使っているのか、説明していただけるかしら」
 事務的な口調で、咎めるように言った。尊大な感じのする物言い、そして金髪に縦ロールという出立ちは寸分たがわず、コガネのものであった。
 それに対し、ベノム、と呼ばれた少女の方は面倒くさそうに、コガネの後ろでへたりこんでいる角刈りの男子を指しながら、簡潔に答えた。
「そっちの奴と、そいつの仲間があたしに決闘を申し込んできた。鍛錬場では、損害軽減の詠唱がされているから、全力で叩きのめした。それに何か問題でも?」
「大アリね。不良だからといって叩きのめしていいっていう法律はないわ。そんな社会のためになるような法律が可決されたら、私は泣いて喜びつつ次の日から不良を叩きのめすだろうけど……そんな法律なんてないのが、現状よ」
「……で、何が言いたいの。不良にからまれたら黙って大人しく堪えろと?」
「別に。私も不良は嫌いだし、からまれて黙っていろ、なんて酷なことは言わない。ただ」
ピッ、と人指し指を立て、そのままそれをベノムの方へと向けながら、糾弾するようにコガネは言った。
「あなたの場合、第一に自分から不良にかかわっている。あちらから絡んできたなら話は別だけど、挑発をすれば不良がそれに乗るのは火を見るより明らかなのに、あなたはそうした。第二に、あなたの報復は過剰すぎるってこと。不良だからといって、不登校になるほどのトラウマを植えつけるのは、言うまでもなくやりすぎ。第三に、あなたは『魔法』も含めてだいぶ『科学』……『東』の方に偏りすぎている。それは、この慶昴魔法国立学園においては、言うまでもなくご法度」
「……そう」
 コガネの糾弾に対し、しかしやはりつまらなさそうにベノムは頷いてから、はっきりと言ってのけた。
「それが?」
 反省のまったく見られない態度に対し、眉根をしかめ――しかし、次の瞬間には不敵な笑みすらも浮かべ、コガネは言った。
「生徒会の権限において、あなたを粛清するわ」
 鍛錬場――訓練という名目で堂々と打ち合える環境においてなされた「粛清」という発言。その意味を看破したベノムは、ゆっくりと金髪の少女の方へと視線を移し――その横に頬の腫れた白髪の少年が表情に焦燥の念を浮かべているのを認め、しかしそれを華麗にスルーし、少しだけ愉快そうに、口の端を吊り上げ、罪を赦す時の、慈愛に満ちた天使のごとく……美しい微笑みを浮かべた。
 喜怒哀楽
 最近の――まあ昔から感情が激しく表に出る人間ではあったけれど――コガネは会うたびに、何か起こるたびに表情が変わる。
 全身で喜怒哀楽の4文字を表していると言っても過言じゃないと思う。
 こんなことを本人に言ったら最低丸一日のタイムスリップを経験できるだろうなぁ……。
 そんなことを考えながらシロは授業中をすごしていた。
 昨日、あの後は何も起こることなく家に帰ることができた。
 家に着くまで散々愚痴られるかとも思ったけどそんなこともなく、コガネはいつになく静かにしていた。
 あの時は即答していたが飛行機"事故"のことはコガネも気になったのだろう。
 シロはそう思うことにした。
『HAHAHAHA!!ゴールデンガール、君にそんな表情は似合わないZE!!』
 などと冗談を言ったり、むやみに彼女に気を使ってわざわざ殴られようとする趣味なんかシロには無い。
 いつものは不可抗力だ。

 最後の授業が終わり、気付けば足は校門へと向かっている。
 今日もまた彼女は来るのだろうと思えば、校門前に佇む彼女を見つける。
 昨日はあんなことがあったが、シロは気にしないで接することにした。
 というか昨日のことを程ほどに気にかけつつちゃんと彼女と会話するなんて芸当は不可能だ。そんなことができるならヘタレの汚名はとっくに返上している。
 数メートルまで近づいたがバイオレットはこちらに気付かない。
 気付いていないのか……無視されているのか、彼女は校門に寄りかかり腕を組み目を閉じていた。
 ……それとも立ったまま眠っている?
 いずれにしろ無視するわけにもいかないだろう。
 彼女の様子に違和感を覚えつつ、その違和感にデジャヴを感じつつ、シロは彼女に声をかけた。
「よお」
 眠っていたわけではなかったらしい、彼女はすぐに目を開けこちらを見る。
 一瞬浮かんだなんとなく怪訝そうな表情はすぐに笑顔に変わる。
 シロを見下したような冷笑に。
舞 の発言:
…ん
舞 の発言:

舞 の発言:
…む?
桜 の発言:
あ、起きた
舞 の発言:

舞 の発言:
…Zzz
桜 の発言:
なに二度寝してるの。置いていくわよ
舞 の発言:
…んー?
舞 の発言:
んぅ、あと…
桜 の発言:
…さて、こんにゃくを顔につけるまであと5秒ー
桜 の発言:
はメンドクサイから今すぐ付けちゃえ
舞 の発言:

舞 の発言:
ひはわぁっ!?
舞 の発言:

桜 の発言:
起きた?
舞 の発言:
…あれー、なんで桜ちゃんがあたしの部屋にー?
桜 の発言:
あーら、私の言ったことをもう忘れたわけ?
桜 の発言:
いい度胸してるのねー
舞 の発言:
…んぅー?
舞 の発言:
んー…
舞 の発言:
(チラッ
舞 の発言:
むー…
舞 の発言:
(まだこんな時間…に起きているのはありえないから…)
舞 の発言:
(…まだ夢の中?)
舞 の発言:
…おやすみなさーい
桜 の発言:
そう、じゃあその可愛らしいおでこに肉って書いてあげようかしら。油性ペンで
舞 の発言:
Zzz…
桜 の発言:
ペンはどこにあるのかしらっと…
舞 の発言:
むにゃ…
舞 の発言:
む…んぅ…
桜 の発言:
あ、あった
舞 の発言:
…やっ
桜 の発言:
あら、やっと起きたの?今日だけで似たようなことを2回くらい言わされた気がするけど
舞 の発言:
…あぅ、桜ちゃん…
舞 の発言:
だめだよぅ…そんな…
桜 の発言:
何言ってるのよ。これくらいはいいじゃない
舞 の発言:
やっ、そこ…
桜 の発言:
…まだ、起きてないのかしら
舞 の発言:
…んー…
桜 の発言:
ふぅ、しょうがないわねぇ。…脱がせますか
舞 の発言:
…スー…
桜 の発言:
…寝たふり?
桜 の発言:
えい(デコピン
舞 の発言:
ひゃっ
舞 の発言:

舞 の発言:
…んぅー?
桜 の発言:
どれだけ寝惚けてるのかしら、この子…
舞 の発言:
…はれー、桜ちゃんだぁ
舞 の発言:
おは…よ…?
桜 の発言:
おはよう、とりあえず寝癖とかはどうにかしなさい
舞 の発言:
う、うん…あの…
桜 の発言:
言い訳を聞いている暇はないわ。舞のおかげで私まで遅刻するかも知れないじゃない
舞 の発言:
えと…そーじゃなくて…
桜 の発言:
何かしら?どもってないで早く言いなさい
舞 の発言:
あ、あの。な、なんであたしのベッドの中に入っているの?
桜 の発言:
肉って書こうと思ったのだけど、それはさすがに可愛そうだからってことで脱がせてあげようかと思って
舞 の発言:
ぬ…!?
桜 の発言:
ほら、起きたなら早く自分で脱ぎなさい
舞 の発言:
あ、うん、でも…その…
舞 の発言:
は、恥ずかしいから…後ろ向いていて欲しいな…なんて…(ごにょごにょ
桜 の発言:
いいじゃない、減るものじゃないんだし
舞 の発言:
あぅ…で、でも…はずかし…
桜 の発言:
恥らってる暇はないのよ。舞を起こすまでにどれだけかかったことか…!
舞 の発言:
やっ、ちょっ、桜ちゃんっ!お、おお、おちついてー!?
桜 の発言:
うるさいっ!さっさと支度しなさいっ!
舞 の発言:
だからって脱がさないでー!?
桜 の発言:
…大きい
舞 の発言:
はぅぅ…
桜 の発言:
…もういいわ、さっさと…支度なさい(ヨロヨロ
舞 の発言:
(あぅぅ、み、見られた…見られた…)
舞 の発言:
(…と、とにかく…仕度しよ…)
舞 の発言:
数刻後
舞 の発言:
お、お待たせ…
桜 の発言:
…行くわよ
舞 の発言:
う、うん…
舞 の発言:
(なんか…怒ってる…?)
桜 の発言:
(まさか、あそこまで大きいなんて…もう、完敗どころか勝負にもなってないじゃない…)
舞 の発言:
(どうしよ…もしかして…寝癖とか凄かったから…)
舞 の発言:
(…いきなり、嫌われて)
桜 の発言:
はぁ…
舞 の発言:
(ビクッ
舞 の発言:
(あ、呆れられた…? 私がだらしないから…?)
桜 の発言:
(大きくなる運動ってあるけど、あれって本当に効果があるのかしら…)
舞 の発言:
…(トコトコ
桜 の発言:
(あれ…?いつの間にか舞が先に歩いてる?)
桜 の発言:
どうしたのよ
舞 の発言:
(そうだよね。桜ちゃん真面目だし…だらしない人とか、あんまり好きじゃなさそうだし…)
舞 の発言:
(嫌われちゃったの…かな)
桜 の発言:
舞。聞いてるの?
舞 の発言:
(…せっかく、桜ちゃんに…好きだって、言ってもらえたのに私、私…)
舞 の発言:
(だめな…子だ…)
桜 の発言:
舞!返事しなさい!
舞 の発言:
(ビクッ
舞 の発言:
あっ、うっ、ごっ、ごめんなさい…!
桜 の発言:
…何で私を鬼を見るように怯えてるのかしら
舞 の発言:
え…あ、あの…
舞 の発言:
(どうしよう…桜ちゃん、ほんとに怒っている)
桜 の発言:
(さっき襲ったのがトラウマにでもなったのかしら…)
舞 の発言:
(私、私が…いけないんだ…こんな、だらしなくて…)
桜 の発言:
(確かに、初日にしてはやりすぎた、かしら?)
舞 の発言:
(謝らなきゃ…)
桜 の発言:
今日の放課後、あとで舞の家に行くから
舞 の発言:
…えっ?
桜 の発言:
じゃあ、クラスは別だからここでお別れね
舞 の発言:
あっ舞
舞 の発言:
まっ、待って、桜ちゃん!
桜 の発言:
キーンコーンカーンコーン
舞 の発言:
あ――
舞 の発言:
っ、桜ちゃっ…
桜 の発言:
(スタスタ
舞 の発言:

舞 の発言:
(避けられ…た…?)
舞 の発言:
(嫌われて…避けられ…て…)
舞 の発言:
…わた…し…
舞 の発言:
ダメな子…だ…
桜の発言:
はぁ・・・
恵里 の発言:
んぁ?
恵里 の発言:
おーい、さくらっ、どしたそんなため息ついてー
桜の発言:
どうしたもこうしたもないわよ・・・
桜の発言:
近くで見て分かったけど、舞って意外と胸が大きいのね
恵里 の発言:
まい? あー、3組の舞っちかー
恵里 の発言:
んー、うちら隣のクラスだから体育とかも一緒だよね
桜の発言:
体育の時はいちいち見てなかったけど、何で今まで分からなかったのか不思議だわ・・・
恵里 の発言:
んむむ、着やせするタイプっているよねー、とゆーか
恵里 の発言:
近くで?
桜の発言:
えぇ、近くで
恵里 の発言:
どんぐらい?
桜の発言:
そうね、腕を前に伸ばして届く範囲くらいかしら
恵里 の発言:
ほー
恵里 の発言:
こんぐらい?(フニャ
桜の発言:
・・・アイアンクローとボディーブローのどっちが好みかしら?
恵里 の発言:
エロちっくにこぶらつい・・・ちょっ、桜っ、その顔こわーっ!般若も真っ青だよっ!?
桜の発言:
何を言ってるのよ私の笑顔は泣く子も黙るのよ?
恵里 の発言:
笑う子が泣き出す、の間違いじゃないのー?
桜の発言:
何を言ってるのよ泣く前に黙らせ・・・笑顔になるわ
恵里 の発言:
今、黙らせるとか言わなかった?
桜の発言:
幻聴よ
恵里 の発言:
さくらって難しい言葉しってんなー、空耳でいいじゃんさー
桜の発言:
空耳って何かウサミミとかネコミミを連想させて嫌なのよ
恵里 の発言:
・・・え?なにそれ?新手のジョーク?
桜の発言:
私は冗談なんて一度も言ったことが無いわ
恵里 の発言:
ふへー・・・まー、さくらってばまじめちゃんだからねー 毎日そんなにピシッ、ってしていて疲れないのかー?
恵里 の発言:
あ、でも
桜の発言:
・・・何よ?
恵里 の発言:
いやなー
恵里 の発言:
さくらってさ、舞っちとよく話すよーになってからは、少し変わったかなーって
恵里 の発言:
そー思った
桜の発言:
・・・そうね、舞と知り合ってから何かを守ることを知った気がするわ
桜の発言:
あと、ああいう子は反応が面白いってことも
恵里 の発言:
・・・ふーん
恵里 の発言:
やっぱりなぁ
桜の発言:
何がよ
恵里 の発言:
んふー、いやねー
恵里 の発言:
さくら、舞っちのこと話している時さ、ちょっと嬉しそうだなーって
桜の発言:
えぇ、恋人ののろけ話は意外と楽しくなるものね
恵里 の発言:
ふはは、そーだよねー、恋人の惚気・・・
恵里 の発言:
・・・・・・え?
桜の発言:
何よ文句でもあるの?
恵里 の発言:
・・・・・・
恵里 の発言:
えーと
恵里 の発言:
さくらっちってさ、女の子だよね
桜の発言:
そうね、どう見ても男には見えないわね
恵里 の発言:
で、ですよねー
恵里 の発言:
・・・んでさ、舞っちも・・・女の子だよね・・・
桜の発言:
実は男だったのよ
恵里 の発言:
・・・
恵里 の発言:
(ポカーン
桜の発言:
・・・どうしたのかしら?
恵里 の発言:
あー・・・
恵里 の発言:
む、胸が大きいって言っていたよね?
桜の発言:
・・・舞は大きいわね
恵里 の発言:
あー・・・胸板が大きいってこと? あれか? 舞っちってあんなに可愛い顔しといて股間には(SE:ズキューン)が付いているってこと? そういうことなのかー?
桜の発言:
公共の場でそんなこと言わないでくれる?私まで同じみたいに思われるじゃない
恵里 の発言:
いや、で、でも、股間に(SE:ズキューン!)だよっ!? そんなずきゅーんでばきゅーんでずばきゅーんなもんが付いているんだよっ!? あの顔で!?
桜の発言:
少し、頭を冷やしなさい・・・?
恵里 の発言:
いやいやおかしいってばさくらっ! ずきゅーんでばきゅーんでずばきゅーんでずばずばきゅ
桜の発言:
(無言でアイアンクロー
恵里 の発言:
あがががっ、きしむきしむっ、ギブギブッ!?
桜の発言:
まったく、下ネタを連呼するなんてどうしたのよ?
恵里 の発言:
い、いやいや・・・どーしたもこーしたもさぁ
恵里 の発言:
さくらっち、ここってさ・・・女子校よ?
桜の発言:
そうよ?それがどうかしたの?
恵里 の発言:
・・・あー
恵里 の発言:
ちょっと待って、頭が痛くなってきた
桜の発言:
ない脳みそを使おうとするからよ
恵里 の発言:
耳に痛い発言は華麗にスルーしてまとめると・・・えーと、だまず、舞っちの胸が思ったよりも大きいと
桜の発言:
そうね
恵里 の発言:
うん、で、次に、さくらと舞っちが付き合っている、と
桜の発言:
そうね
恵里 の発言:
・・・うん、んで、だこっからが問題なんだわ
恵里 の発言:
ここ、女子校
桜の発言:
・・・一体、何が言いたいの?
恵里 の発言:
いや、だって、さくらが言うには、舞っちって・・・お、男?
桜の発言:
何馬鹿なことを言ってるのよ私は正真正銘の女よ
恵里 の発言:
いやいや、桜っちはそりゃ女の子だけどさ
恵里 の発言:
えーと・・・つまりあれだ
恵里 の発言:
仮に、だよさくらは女の子でしょ?で、舞っちも女の子だとする
恵里 の発言:
そーなると女の子同士じゃん?
桜の発言:
そうね
桜の発言:
何か問題があるかしら?
恵里 の発言:
・・・あー
恵里 の発言:
レ・・・ゆ・・・えーと・・・えーと・・・
桜の発言:
レズか百合ね
恵里 の発言:
・・・
恵里 の発言:
マヂっすか?
桜の発言:
マジもマジよ大マジよ
恵里 の発言:
・・・
恵里 の発言:
そ、そっかぁ(ちょっと後じさり
桜の発言:
何引いてるのよ
恵里 の発言:
えっ? い、いやいやー、引いてないよー、うん、引いてないさー
恵里 の発言:
んー・・・
恵里 の発言:
(・・・冗談かな? 舞っちが男だってのもあきらかに冗談っぽいし・・・)
恵里 の発言:
(あ、いや舞っちが男なのが冗談で、付き合っているのは本当なのか・・・?)
恵里 の発言:
(いやいや、でも・・・うーん・・・)
桜の発言:
何をそんなに悩んでるのよ
恵里 の発言:
えー、だってさぁ
恵里 の発言:
(ん? でも待てよ・・・)
恵里 の発言:
(さくらっちは真面目それは確定だから・・・レズ・・・とか、そんなことになった場合、悩むはずだ)
恵里 の発言:
(なのに、悩んでいないってことは・・・ははーん、冗談かそっか、さくらっちも冗談がわかるよーになったのか、んで、あたしをからかおーって魂胆だなぁ?)
恵里 の発言:
いやー、そーだね、何で悩んでいるだろっ
桜の発言:
ほんとね今までのあなたからは考えられないくらい悩んでいたわもう、今後あなたがこれ以上悩むことなんてないでしょうねおめでとう
恵里 の発言:
はははー、ありがとー
恵里 の発言:
んで、おめでとうついでに聞くけどさー(ニヤニヤ
桜の発言:
何よ?
恵里 の発言:
んふー、いやねー、恋人同士つうことはキスとか、ちょっと口では言えないよーなこともするってことだよねー
桜の発言:
具体的にはどういう行為なのか言ってくれないと分からないわ
恵里 の発言:
えぇー、ふふーん、わかっているくせにー、このこのっ
桜の発言:
でも、まだ付き合って1日目だし何もないわよ
桜の発言:
そうね、キスをしたくらいかしら
恵里 の発言:
(ごめん、ちょっと席をはずす)
桜の発言:
はーい
恵里 の発言:
おk、やーすまんかったね
恵里 の発言:
続けよか
桜の発言:
うん
恵里 の発言:
キ・・・ふーん、キスかー
桜の発言:
えぇ、キスね
恵里 の発言:
ふーん・・・(よし、からかってやろっ)
恵里 の発言:
(ニヤニヤ
桜の発言:
・・・何、さっきからニヤニヤしてるのよ気持ち悪いわね
恵里 の発言:
んー、いやねぇ
恵里 の発言:
今時で、恋人同士でキスですよー、初々しいねー、奥手だねぇー、って思ってさ
桜の発言:
まぁ、舞もゆっくりの方がいいでしょうしね
恵里 の発言:
ふーん・・・?
恵里 の発言:
でもさぁ、今時だよ?恋人なのにあれやこれもしないってのは、ある意味淡白なんじゃないのー?
桜の発言:
何を指してるのかは分からないけど、いずれはするつもりよ?
恵里 の発言:
いずれ・・・ねぇ・・・ふふーん?
恵里 の発言:
でもさ、そのいずれっていつぐらい?
桜の発言:
そうねぇ・・・2ヶ月くらい?
恵里 の発言:
2ヶ月・・・!
恵里 の発言:
さくら・・・もしかして、今、2ヶ月って言った・・・!?
桜の発言:
・・・?それがどうかしたの?
恵里 の発言:
・・・遅い
恵里 の発言:
・・・おそーい
恵里 の発言:
スロォォウリィィィッ!!
桜の発言:
・・・あのね、あの子はあなたと違って純情なのよそういうことに奥手なのよ分かる?
恵里 の発言:
そしてあまーい!
恵里 の発言:
あのね、さくらっち、純情ってことはさ、いわゆるあれだ、ほら、色で言えばさ、白だよ?
桜の発言:
そうね・・・?
恵里 の発言:
つ・ま・り
恵里 の発言:
2ヶ月なんて悠長なことやっていたら・・・
恵里 の発言:
舞っちは他の人に染められるかもしれないんだよー!?(SE:ババーン!)
桜の発言:
何を言うかと思えば・・・そんなことをしようとする輩がいたら、潰すわよ
恵里 の発言:
ふふーん、だから、甘いんだよぅ
恵里 の発言:
潰すっていうけどさ、具体的にはどうするわけー?
桜の発言:
そうね・・・埋める?
恵里 の発言:
おぉぅ!アグレッシヴ!でもでもぉー
恵里 の発言:
埋めるにしても潰すにしても・・・その前に舞っちがその人色に染め上げられていたらどーするー・・・?
恵里 の発言:
そうしたらー、そうだったら・・・
恵里 の発言:
さくらっち、負けちゃうよぉ?
桜の発言:
・・・なーに、あなた、私に喧嘩でも売ってるのかしら?
恵里 の発言:
いやいやめっそーもないー
恵里 の発言:
でもさー、舞っちはあれだ、あんなに可愛らしいんだからさ
恵里 の発言:
潰すにしても潰しきれないしー
恵里 の発言:
それにさ、昔っから言うじゃん、戦は質より量・・・ってね
恵里 の発言:
ほんとに大丈夫なのかなー、そんなに悠長でー
桜の発言:
・・・それでも、あの子が嫌がることをするくらいなら、そっちの方がマシよ
恵里 の発言:
ふふーん、あの子が嫌がるなら・・・ねぇむしろ逆かもよー?
恵里 の発言:
舞っちはもっともっとさくらっちと・・・ごにょごにょ・・・なことをしたがっているかもねー
恵里 の発言:
なのに構ってくれないとなったら・・・
恵里 の発言:
・・・浮気しちゃうかも?
桜の発言:
・・・何?そんなにアイアンクローが好きなのかしら?
恵里 の発言:
んふー、アイアンクローなんて好きなだけするが・・・あっ、ちょっ、そこんところは冗談だからマジ顔にならないで欲しいなっ、ねっ、ねっ?
桜の発言:
(無言でアイアンクロー
恵里 の発言:
ぐふぉぁっ・・・ぐぐぐ・・・ぎぶ・・・ぶはっ・・・
桜の発言:
まったく、私を虐めようと思うからそんなことになるのよ
恵里 の発言:
ぐっ・・・ぜー、ぜー、ま、マジに本気だったね、今のアイアンクロー・・・まさしく鋼鉄っ・・・!
恵里 の発言:
(ま、内心でだいぶ動揺しているってことだよねぇ、んふふー・・・)
恵里 の発言:
ま、まぁでも一応さ、もーちょっと積極的でいいんじゃないのー、って言っておくよ
恵里 の発言:
だいたいさー、あの子あの子って、さくらっちらしくないねー、もっとこう、我がままでよくない? 舞っちはいい子だからそれでナイスバランスよ?
桜の発言:
うるさいわね、それ以上言うとまたアイアンクローをするわよ
恵里 の発言:
おぉっと、ご勘弁をー
恵里 の発言:
(これぐらいでいいかなーふふーん、さくらっちが私をからかおうなんて十年早いのさー♪)
恵里 の発言:
(・・・ん?でも動揺・・・?あれ・・・?)
恵里 の発言:
(・・・・・・まぁいっかー)
「……ったくなにが『今仕事で手が離せない』だよ。単なる罰当番なんだからもっと肩の力を抜けっての」
 自動販売機に小銭を入れながら、シロはため息をひとつ、ついた。
 そのため息は、コガネに面と向かって文句を言うことのできない、自分自身にむけられていたのかもしれない。
「まぁ、筋金入りの問題児2人が不良グループを見張るというんだから、ほとんどギャグだよなぁ」
「……なるほど、『ギャグ』ですか」
 背後から聞こえたその呟きと共に、目の前の自販機に幾筋かの光軌が走る。今まさにボタンを押そうとしていた手が、ピクリと固まる。
「ならばこの展開も、『お約束』ということですね」
 声と共に、切り刻まれた自販機が崩れ落ちる。シロの背中を、冷や汗が滑り落ちる。
「あなたは遅刻だけではなく、早退の癖もあったのかしら? ならばもう少し『仕事』を増やす必要がありますね」
「……いや、まさか。そんなわけ無いじゃないですか」
 シロはそういいながら、恐る恐る背後を振り返った。そこには、腕組みをしているあきれ返った表情のクロが居た。
「ならなぜ、食堂に? 『仕事』はどうしました?」
「…………いや、これもその一環で」
「レモンスカッシュを買うことが、ですか?」
 場の温度が一段階下がった。シロの全身が瞬間固まり、ついで微かに、震えだす。
「……生徒会の情報網を、甘く見ないでもらいたいですわね。あなた方の行動は、逐一報告されているのですよ?」
「も、申し……訳……ありま……せんでし……た」
 歯の根が合わない中、何とか声を振り絞ってあやまる。
「よくできました。なら、さっさと仕事に戻りなさい。あなたの仕事は、『西』と『東』の本当の歩み寄りのために、大切な事なのですから」
 まるで少女の飼い犬であるかのような従順さで少年は頭を下げ、生存本能に導かれるままにその場を去ってゆく。
 少年の姿がしだいに遠ざかり、やがて見えなくなったところでクロはゆっくりとため息を吐いた。
「……本当に緊張感がないっていうか……何であんな人が……」
「まぁまぁ、そう言うなってクロちゃん」
 突然、クロの背後に一人の男性の姿が現れる。
「……突然現れて、人の頭を撫でないでください」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし」
「それに、むやみに魔法を使うのは、校則違反です。どうせまた正規の手順を踏まない『無詠唱行使』なんでしょ?」
「うんうん、よく出来ました」
「…………私は生徒会長なんですよ?」
「うんうん、でもクロちゃんは俺のかわいい子猫ちゃんでもあるし」
relay04.png
 そういうと、その男はクロの頭をワシワシとかき混ぜた。やたらと筋肉質の男と比べると、クロの幼さがよりいっそう目立つ。
 もっとも、2メートル以上もあろうかという筋骨隆々の男と並べば、たいていの女子はお子様に見えてしまうのだろうけれど。
「あぁ、もう。これは止めてくださいっていつも言っているのに。あなたも学習能力が無いんですか」
 そういいながらも、クロの表情は別段イヤそうには見えない。
「彼をあんまり苛めちゃダメだよ? クロちゃん」
 その言葉に、クロは心底いやそうに眉をひそめた。
「……正直、私は納得が出来ません」
「あんな人から、学ぶものなど無い、と?」
「そうです、私は何色にも染まらないし染められたりはしません。私は『生徒会長』なんですよ? なのになぜ」
「だからクロちゃんはお子ちゃまだって言うんだよ。……この学園の創設の由来は、クロちゃんなら知っているよね?」
「もちろんです。長きに渡る『西』と『東』の――――『魔法』と『科学』の争いを無くすべく、双方の文化の融合を目指して作られた場所」
 そう、この慶昴(ケイボウ)国立魔法学園および周辺の都市は、『魔法』と『科学』の融和を図る、いわば一種の実験都市だった。
 当然、市民は何らかの魔法が使える者もしくはその家族で占められているし、『魔法』や『科学』のどちらかに偏った生活は、都市のそもそもの目的から反するのでご法度である。
「うんうん、よく出来ました。さすがは今年の最高学年の成績最優良者」
「……馬鹿に、してます? いくらお兄様でも、許しませんよ?」
「まさかぁ。いくら幼馴染だからといっても、そんなことはしないよ?」
「…………どうなんでしょうか」
「とにかく。その相容れない文化の融和を目指した学園のトップともあろうお人が、まさか肌に合わない生徒を排斥するだなんて事は……ないよねぇ」
「っっっ」
 クロは言葉に詰まり、うつむいてしまった。そんなクロを、男はそっと抱きしめる。
「大丈夫大丈夫。ゆっくりと、少しずつ大きくなればいいんだから、ね?」
「……ズルイです、お兄様は。本来ならば、お兄様のほうが会長には相応しいのに」
 真っ赤になったクロが、ポツリと呟く。
「ふふっ。大丈夫大丈夫。クロちゃんは良くがんばっているよ」
「………………」
 二人の周りにだけ、時間が止まったかのような柔らかい空気が漂っていた。



「ねぇ、そこのヘタレ」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいはいいから。私ちょっと喉が渇いたんだけど、って言わなかったかしら?」
 コガネは笑っていた。それはもう見るものすべてが蕩けてしまうかというほどの、とびっきりの笑顔であった。だがしかし、今度ばかりはシロも一緒には笑えなかった。
 コガネから放たれているオーラが、その場のすべてを凍りつかせていた。
「私のレモンスカッシュは?」
「イヤ、その……」
 この瞬間、2人は『仕事』のことなどきれいさっぱり忘れ去っていた。目の前の少女の体が、少しずつ宙に浮いていく。
 シロは蛇ににらまれた蛙の様な面持ちでこの場にいる事しかできなかった。まるで、時が凍りついたかのように。
 やがて、少女の頭が天井に届くかという高さになった時に、凍りついていた時が動き出した。
「あなたはお使いすらロクに出来ないの? この役立たず!!」
 怒声とともに、少女のドロップキックが飛んでくる。
「わわっ。待て、それはシャレにならん!」
「問答無用!!」
 重力を利用したその攻撃を受け止めようと、つい目の前で手を交差させるシロ。だがしかし、そんなことで防げるはずも無く……。
 シロの最後に見たものは、靴の裏とすらりと伸びた足、それにその奥の『白』だった。
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