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1.3章 ~少女領域~

 私は一生懸命走っていた。
 ヤバイ、後数十秒でチャイムが!
 そう思いながら、最後の角を曲がり、全速力で教室へ向かう。
 そして、チャイムが鳴ると同時に教室のドアを開く。
「ギ、ギリギリセーフ!」
 走ったせいで体力を使うなんてことをしたんだから、間に合わなくちゃね。
 しかし、教室から無慈悲な声が聞こえる。
「どう見てもアウトだ馬鹿野郎」
 声のした方を見ると恐怖の担任こと濤崎恭子先生が教卓に皮肉な笑みをこちらに向けながら足を組んで座っていた。
「せ、先生!」
「私に給料以上の仕事をさせようとするなんて、やるじゃないか高町」
 先生の顔は笑っているけど、どう見ても笑ってる雰囲気じゃないよ・・・!
 多分、今の私の顔は引き攣ってると思う。
 この先生はとても怖いのだ。
「よし、じゃあちょっと隣の教室に行こうか」
「うぁ、ちょっと待っ」
 全部言い終わる前に襟を掴まれて強制的に連れて行かれる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さて、何で遅れたんだ?」
 先生は相変わらず皮肉な笑みを浮かべながら聞いてくる。
「おいおい、せっかく誰にも聞かれないように部屋を移動してやったのに」

「先生には聞かれるじゃん・・・」
 私はポツリと呟く。
「当たり前だろ、お前が遅刻するのが悪い」
 相変わらず、嫌なことをハッキリと言ってくれる。
「・・・柊先輩のピアノの演奏を聴いていたら、眠くなってしまって・・・」
 そう言うと、思いっきりグーで頭を殴られた。
「痛いですよ先生!」
「お前なぁ、人のせいにするなんてよくないぞ」
 だからって殴らなくても・・・
「そんなの、眠くなったお前が悪いんだ。諦めろ」
「だって、先生が言えって・・・」
 そう言うと、再び頭をグーで殴られる。
「なんで殴るんですか!」
「だって、お前の頭ってなんか殴りやすいし」
 なんて理由だ・・・。
「それに、痛く無いように殴ってるんだからいいだろ」
「そういう問題じゃありません」
 本当に教育委員会に訴えようかな・・・。
「まぁ、お前殴ってたらスッキリしたし、戻っていいぞ」
「そうですか・・・」
 なんか、色々な意味で疲れちゃったな・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁ~、やっと終わった~」
 お昼休みになって、ため息を吐きながら私はいそいそと昼食を取り出した。
「今日は災難でしたね」
「だ、大丈夫・・・?」
 そう言って、椅子と昼食を持って私の席に来た藍色の髪の冷静な女の子が橘命ちゃんで私を心配してくれた少しおどおどしてる黒髪の女の子が道下まちるちゃん。
「それじゃあ、まるで私が心配してないみたいじゃないですか」
「なんで私の考えてることが!?」
 的確かつ最高のツッコミをしてみる。
「なんとなく、そう思っただけです」
 普通すぎる回答だった。
 まぁ、命ちゃんが変なことを言うのは今更だけど。
「それより、早く昼食食べよっ!」
 私のお腹は本気で限界に達しつつあった。
 正直、これ以上食べないでいると暴れだしそうな勢いだった。
「そうですね」
「次は体育だもんね」
 そう言いながら、二人も椅子に座って持ってきた弁当を私の机に置く。
 ちなみに、私はもう箸を持って臨戦態勢だった。
「いただきます」
 三人でそう言うと同時に私は玉子焼きを口の中に放り込む。
 玉子焼きは私の口の中で甘みを出しながらゆっくりととろけていく。
「今日も美味しそうだなぁ・・・」
「相変わらず、職人並みの腕前ですね」
 まちるちゃんと命ちゃんが私の弁当を賞賛する。
「えっへん、凄いでしょ!」
 とりあえず、調子に乗ってみる。
「作ったのはお兄さんじゃないですか」
 命ちゃんにあっさりとツッコミを入れられる。
「わ、私だって手伝ったよ!」
「少しだけでしょうけどね」
 図星なので言い返せなかった。
「いつか見返してやるからね!」
「頑張ってくださいね。それなりに応援してますから」
 ここまでは、毎日のように繰り返される他愛もない会話。
 しかし、次の命ちゃんの言葉は何時もとは違う内容だった。
「そういえば、昨日、兄さんが慶太さんに『好きな人はいないのか?』と訊いたそうです」
 その言葉に、私は口の中のたこさんウィンナーを吹きそうになる。
「だ、大丈夫・・・?」
「う、うん、大丈夫・・・」
 心配するまちるちゃんになんとか答える。
 しかし、次の言葉が気になって心臓はバクバクしている。
 聞きたいような、聞きたくないような。
 そんな微妙な心境をあえて無視して、命ちゃんは結果を淡々と語る。
「どうやら、今のところは好きな人はいないそうです」
「え?それって・・・」
 私はおそるおそる聞いてみる。
 それは、よく言えば「まだ大丈夫」だと言う意味だけど・・・。
「ぶっちゃけ、脈なしだそうです」
 その言葉を聞いた途端、雷に撃たれたような衝撃を受けた。
 そして、そのまま机に突っ伏した。
「だ、大丈夫かな・・・?」
「そのうち、普通の状態に戻ってるでしょう」
 そう言いながら、普通に弁当を食べる命ちゃん。
 唐突にガバっという効果音が付きそうなほどの勢いで顔を上げて、その勢いのまま弁当を食べる。
「あ、あの、理奈ちゃん・・・?」
「そんな美味しそうな弁当を無駄にするような食べ方はやめてください」
 まちるちゃんと命ちゃんが何かを言ってるけど、それを気にせずにひたすら食べる。
 すぐに弁当箱は空になる。
「よっし、今日は暴れるぞー!」
 そう言って、私は体操着入れを持って更衣室まで走ろうとした。
「あ、食べた後すぐに運動しちゃ・・・」
「まったく、忙しい人です」
 教室を出る直後、二人のそんな声が聞こえた。
 別に、私だって好きで走ろうとしてるわけじゃない。
 ただ、どうしても抑えられなかった。
 まだ私にもチャンスがあるという事実が嬉しいから。
 あるいは、私が未だにそういう対象として見られない悲しさから。
 どっちかはよく分からないし、どっちもなのかもしれない。
 ただ、どっちにしても動きたかった。
 これは私の癖なのだ。
 感情が揺れると無性に走りたくなってしまう。
 身体を動かして必死に落ち着こうとする。
 多分、他の人にもあると思うけど、私は特に激しい部類だと思う。
 誰かと本気で口論すると動きたくなる。
 別に、暴力を振るいたいわけではなく、走ったり跳んだりしたいだけ。
 だから、柊先輩に何かしたいわけでも何かをするわけでもない。
 ただ、身体が動かしたくてしょうがない。
 動かさなければ心が壊れてしまいそうな感覚に襲われる。
 だから、ひたすら走る。
 だから、ひたすら跳ぶ。
 身体が音を上げるまでひたすら動く。
 そして、いつも通りに戻る。
 これの繰り返し。
 だけど、そんなことをしていても私は自分が大好きなんだ。
 私は更衣室の扉の前に立つ。
 そして、ゆっくりと扉を開けて中に入る。
 そこは静かで空気が冷たくい部屋だった。
 私はその部屋の時計を見てみると、次の授業まで15分はあった。
 私はすぐに着替えず、その部屋の折りたたみ椅子に座り、ゆっくりと息を整える。
 そうして、身体を休めながら柊先輩を振り向かせる方法について考える。
 だけど、答えは最初から決まっている。
 『その時の自分が出来る限りのこと』
 当たり前だけど、それしかなかった。
 いくら今のうちに手を考えたとしても、どうせ実行できないのは自分が一番分かってる。
 なら、余計なことを考えずにその時になって考えたほうがいいと思う。
 それが私の唯一のやり方なんだから。
 そんなことを考えていると、不意に扉が開く。
 どうやら、クラス委員長の柴崎都ちゃんが来たみたいだった。
「ん?今日はずいぶんと早いんだね?」
「まぁね」
 ちなみに、都ちゃんは高校からのライバルなのだ。
 ただし、運動限定だけど。
「・・・今日は負けないからね」
「こっちこそ」
 そう言って、お互いに握手する。
 すると、扉から他のクラスメイトも続々とやってくる。
 私達は手を離し、最後に挑戦的な笑みを向け合いながらロッカーに向かった。

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クリスマス用小説第2弾。
思いっきり連載物ですみませ(ry
急かされないとやらないやつでごめんなさ(ry
その他もろもろでごめんなさ(ry
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