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スプリングガール 秋と春、落下と跳躍

 俺は春が嫌いだった。
 俺の名前に含まれている『秋』と比べて『春』は優遇されている気がするのだ。
 春は楽しく、秋は寂しい。
 そんなイメージを持つ人は多いはずだ。
 今、俺の前で散っている桜だって十分に寂しさの象徴になりえるにも関わらず、だ。
 これも秋が別れの季節、だなんて言った奴のせいに違いない。
 そして、もう一つ。
 俺が『春』が嫌いな理由がある。
「あっきー、こんな所で何してるのー?」
 ぼんやりと思考している俺に能天気に話しかけてくる声。
 俺の幼馴染にして春と同じかそれ以上に嫌いな――羽宮春奈の声だった。


 春奈の特徴は良く言いえば世話焼き。
 しかし、大概はやりすぎて鬱陶しがられる。
 こいつと一緒にいて何度イラっとしたことか。
 まぁ、悪意から来てる行為ではないからか敵以上に味方がいるし、スプリングガールなんて割と可愛らしい愛称で呼ばれてたりもする。
 おかげで、基本的に一緒にいる俺はフォールボーイなどと呼ばれる羽目になってしまった。
 スプリングガールはともかく、フォールボーイは普通にダサい。
 しかし、スプリングガールとフォールボーイの名が付けられたその日、不幸にも俺は風邪で休んでいて、登校した日には既に広まっていたために広まることを阻止出来なかったのだ。
 まぁ、最初は若干の抵抗があったものの、好きな奴か嫌いな奴にしか言われなくなったので気にならなくなった。
 好きな奴はちゃんと時と場合を選ぶし、嫌いな奴なら何を言われたって大差ない。
 それに、『落ちる少年』というのはマイナス思考な俺には意外とお似合いな気がする。
「あっきー、また考え事ー?」
 春奈は俺の顔を覗き込みながら不満そうに聞いてきた。
 俺は散歩していただけなのに、春奈は自分の買い物へと付き合わせやがったのだ。
 まぁ、どうせ目的のない散歩だったからいいんだけど。
「あっきーはさ、難しいことを考えすぎだよ?」
「別に難しいことなんて考えてねーよ」
「今だってこの国の不景気をどうやったら改善出来るか考えてるし」
「何で俺がそんなことを考えなきゃいけねーんだよ」
 何で仮にも高校生が友達といるときに国の不景気について考えるんだよ。
 じゃあ、実際に考えていたことはどうなんだとか言われたら何も言い返せないけども。
「つーか、お前は何考えてたんだよ」
 言い返せないから、逆に聞いてみた。
 攻撃は最大の防御である。
「んー、この国の不景気をどうやったら改善出来るか、かな」
「お前が考えてたんじゃねーか」
「だって、あっきーがそのことで悩んでるなら協力しなくちゃって……」
 こいつは、春奈は当たり前のように協力しようとする。
 例え、幼馴染の俺以外であろうと、同性だろうと異性だろうと、優等生だろうと劣等生だろうと、生徒であろうと教師であろうと、知り合いでもそうでなくとも、例外なく手を差し伸べようとする。
 そんなところがあるから、俺は春奈のことを――
「そうだ、買い物が終わったらそのまま屋上に行かない?」

 このデパートの屋上は小さな子供のためのミニ遊園地になっていて、俺や春奈も10年くらい前にはよくここに来て遊んでいた。
 数年前にとても便利なスーパーが近くに出来てから、来なくなったけど。
 少なくとも、数年前の俺達が来れる距離じゃなかったし。
「懐かしいねー」
「そうだな」
 昔はよくここに来て遊んで、あまりに楽しくて帰るときはいつも泣いてた気がする。
 で、その後はいつも春奈に宥められてしぶしぶ帰ったっけ……。
「あっきー、久々に来た感想はどう?」
「なんか、小さいな……」
 別にここが特別小さいわけじゃなく、俺が大きくなったからそう感じるだけだけど。
 それでも、昔は1日あっても回りきれる気がしないほど大きく感じたのに。
「私たちが大きくなったからね」
 そう言う春奈の瞳はどこか遠くを見ていた。
 昔でも思い出してるのかもしれない。
「だからね……」
 そこで一旦、言葉を区切ってから俺の方を見る。
「だから……ね、大丈夫だよ」
 何が、とは聞かなかった。
 多分、先ほど悩んでいたことを指しているのだろうから。
 俺の悩むというほどではない考え事を春奈は俺以上に悩んでいる。
 俺はただ、好きな子のことを考えていただけなのに。
 好きだから嫌い。
 嫌いだから好き。
 いや、そんな難しいことですらない。
 ただ、誰にでも優しい春奈に拗ねているだけなのだ。
 春は誰であろうと癒してくれる。
 それを独占したかっただけなのだ。
 我ながら子供じみている。
「ん、どったの?」
 春奈は優しい笑みを湛えながら俺を見つめる。
「……何でもねーよ」
 いくら落ちようともバネがあれば跳躍できる。
 いくら落ちようとも羽があれば飛翔できる。
 こいつがいてくれる限り頑張れる。
 だから、『みんなの春奈』でいてくれるうちにもっと成長して――告白しよう。
 これが、高校生になってから初めての休みの日の出来事だった。
 
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COMMENT

香月 URL @
04/14 10:13
いまさらながらに読む。. …………、ふみゅ。
掌編や短編って、難しいよね。山場を作れないままに文字数制限とかがねぇ。

と、2000文字に収められない私が言って見る。
……いっそ連作短編にしたら?(あ゛








 

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