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魔法学園小説 ―31話―

 コガネの意識がシロから一瞬黒服に移る。
 その一瞬を逃さず膨大な魔力を伴った"ベリアル"の魔法がコガネに向けて放たれ……、コガネがそれに気付くことは無かった。

 トランが叫ぶ
「コガネ君!ここを通りたければ私達を倒して行け!」
 同時にトランはありったけの魔力で魔法弾を形成し頭上に弾の壁を作る。
 コガネに向けて飛ばしはしない。秒速十メートルを超える速度で慣性を無視して飛ぶコガネに対して即座に狙いを付けることなんか不可能だ。
 そのまま直進してきたコガネは壁の寸前ですとんと下に落ち、まずは一番近くにいる黒服を狙う。
 必死でコガネを目で追っていた黒服はその時になって初めてトランの指示の理由を把握することになる。
『十メートル程度の距離はもう彼女の射程範囲内だ。彼女がどこを向いているなど考える前にシールドの呪文を詠唱し、次の瞬間に攻撃されても展開できるように準備しておけ。』
 もはや呪文は間に合わないと銃を構えなおしている間、コガネの拳が顔にめり込んでいた。

「ベノムに話を聞いてなければ最初にやられていたのは私だったかもしれないな……。」
 加減速の手間を必要とせず文字通り空中を自由自在に、しかも高速で飛び回る。
 その話を聞いたときトランも何かの間違いかと思ってしまった。
 そんな急加速に人間の肉体は耐えられるようにできていない、カントレイルだってここまで極端な方向転換ができたという記録は無かった。
 ……だがコガネはそれをやっている。
 未知の魔法によるものか、それとも人知を超えた計算能力で内臓への負荷を軽減しているのか、理由はともかくコガネには慣性の法則は通用しない。……彼女と対するならばそう思わなければならない。

 コガネのでたらめさを思い知らされた他の黒服たちが一斉にシールドの呪文を唱え始める。
 黒服を殴った反動で軽く浮き上がったコガネは滑らかに視線を動かし、他の獲物の位置を把握する。
『左右に黒服が2人と1人、少し離れて前の方にあの男と女。……別に誰からって選ぶ必要なんか無いじゃない。全員狙えばいいだけよ!』
 コガネは重力に引かれて落ちることなくゆっくり浮き上がりながら両手の平を頭上に掲げ、無数の光弾を上空に射出する。
 発射した光弾は方向転換し、それぞれ敵へと向かって落ちてくる。
 ……はずだった。

 コガネが上を見上げると、トランの作った弾の壁がコガネを覆う形に配置を変えていた。あれが光弾を消し去った……?
「やれやれ、特別な訓練は受けていないと聞いていたのだが……とんでもないな。
 高速で飛び回れるどころか思考速度も尋常じゃない。もしこの光弾を直線的に放っていたら間に合わなかった……君の勝ちだったよ。」
 周囲では黒服とバイオレットが銃を構えている。でも今の私ならば気にする必要はない。
 たとえこの前の毒使いがいても問題なく防ぐことができる、ここに私を脅かせるだけの力を持った人間はいない。そう直感が告げている。
「あれは魔法を無効化する力を持った特殊な魔法弾でね。作る際に込めた魔力と同程度の魔力を消し去ることができる。」
「それじゃ、さっきのをもう一回くらいが限界かしら?」
 黒服の殺気が膨れ上がるが、トランはそれを手で制する。
「……さすが。どうやらそのようだ。
 しかも私はあれに全ての魔力を費やしてしまっているが、コガネ君はまだ余裕があるようだ。そこまで読み取られては絡め手も通じそうにない、この戦いは私達の負けだ。」
 負けといいながらトランには奇妙な余裕が見られる……。
 だがバイオレットは銃をしまいトランは上空に展開した魔法弾を解除した。
 黒服たちはまだ銃を構えたままだが、殺気よりも動揺が強い。
 他に周囲に奴らの味方と思われる気配は無い。
「その余裕が気に入らないけど……、裏でこそこそやってるってわけでも無いようね。」
 ようやく黒服も戦闘が終わったと悟ったのか先ほどまで唱えていた呪文もキャンセルする。
 空気が安穏としたものに変わっていく。
「それで、どうして私たちが襲われたのかいまいち理由が分からないのだが、教えてくれないかな?」
 言われてコガネは思い起こそうとするが……なにも出てこない。
「あー……、昨日のことがむかついたから思わずやっちゃったみたい。」
 なぜか、最初の怒りが嘘のように思えるくらい今は気分がいい。
 暴れてすっきりしたというのもあるのだろうが、怒っていた原因を忘れてしまったような、そんな感じ。
「……校外で暴れたと生徒会に知られればまたなにかしらの罰を受けることになるだろう。もう少し周りを気にした方がよいのではないか?」
「いらないお世話よ」



 なんとなく細かいところまで気がまわらない。
 大切な何かを忘れてしまっている気がする。
 やつらと別れてから、とてつもない失敗を犯したような、そんな不安がどんどん大きくなっていく。
 こんなときはたいてい"あいつ"にあたる事で解消してきた……

 あれ?
 あいつって、誰?
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