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魔法学園小説 ―13―

 赤に変わった信号が青に変わり、点滅してまた赤に変わる。
 今あったことを思い起こしながらトランはもう誰もいない交差点の向こう側を見つめていた。
「まさか……な。」
 ベノム、ベリアルに自らの推測を話したときは本人ですら半信半疑だった。
 推測はできても信じることはできなかった。

 トランは自らの能力に自信を持っている。
 自信を持っているからこそ自らの振るう魔法がどのような結果を生むのか、はっきりとイメージすることができる。
 明確なイメージは魔法に歪みのない確固たる形を与えてくれる。
 完璧な形を持った魔法はどんな抵抗をも物ともせず必然としてその効果を発揮する、絶対的な力を持つ。
 絶対的な力を持つ魔法は、自分により強固な自信を与えてくれる。
 この正の連鎖が崩れない限り、トランの魔法が防がれることは無いはずだった。

 『君が欲しい』
 この言葉をトリガーとしてトランは呪文を完成させた。
 シロと呼ばれる少年の自我を奪い操り人形と化す、そんな魔法をトランは完成させたのだ。
 シロが、より強固なイメージを作り抵抗したならば防がれる可能性はあった。だからシロに気付かれないよう呪文は細心の注意のもとに行った。
 もしもどこかの誰かがトランの呪文を妨害してきたのなら事前に防がれることもあっただろう。だから周囲には誰もいないことは確認した。
 もしもシロが心を持たない人形か何かだったなら?そうでないことは調査済みだ。
 あるいは……。
 あらゆる可能性を想定し防がれる全ての可能性を排除したこの魔法が、しかし何の効果も表すことはなかった。

『あの飛行機に乗っていた全ての人間が即死していた中、あの少年は無傷で生き残っていた。
 ジャミングによって詠唱魔法が使えない状態であったにも関わらず、だ。
 運が良かったとしても後の火災でどうやって生き延びることができたのか?
 私が見出せる、あり得ないと言い切ることのできない可能性は一つだけだ。』
 今も……おそらくあの時も、彼はなんの詠唱もせず、はっきりとした抵抗するイメージも持たず、身を守らなければという意志すら持たず、形作られてさえいない垂れ流された魔法力だけで自らを害する物を退けたのだろう。
 強い意志の込められた詠唱魔法、人の身では到底耐えることのできない物理現象、それらを無意識のうちに超越してしまう魔法力。
 あり得ないと一蹴したくなるそんな能力を、有史上一つだけ持っていたとされる存在がいた。
 それがトランが否定し切れなかった唯一の可能性。

「やはりあのシロという少年は、神のごとき魔法力の持ち主なのか……。」



 青、赤、青、赤、……
「はっ!?」
 何度変わったのか、目の前の信号はまた青を点していた。
「しまったな……またやってしまった。興味が沸くとすぐこれだ」
 興味深いことがあるとつい考え込み忘我の境に入ってしまう、それがつい数十分前にもベリアルに注意されたトランの癖だった。
 交差点を後に早足で歩き出す。
 先ほどシロに伝えた魔法のコツ。それを彼が覚えていたなら明日面白いことが起こるかもしれない。
 そんなことを考えつつトランは家路に着いた。
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