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魔法学園小説 ―14話―

「私はトラン。君が欲しい」
 その言葉を聞いた途端、シロは身の毛もよだつ思いで走り去ってしまった。
 言われた事のショッキングさと、あまりにも印象的すぎる、赤と青の瞳に驚いてしまったから。
 ――――そしてそれ以上に、無意識の奥底から発せられた危険信号に、本能的に従ったから。



「ハァハァハァハァ……、くそっ!」
 自宅を通り過ぎ、適当に角を曲がり、ただ闇雲に走り続け、一体どこにむかっているのか、今どこを走っているのかが解らなくなってもなおひたすらに走って。
 これ以上はもう走れないと思ったところで足もとの砂地に足を取られて倒れこんでしまったシロは、そのまま仰向けになると息を整えながらも思わずつぶやいた。
「一体何だよ、アイツは…………」
「……それはこっちの台詞です。一体あなたはここで何をしているのですか」
「…………へっ?」
 乱れる息を整えながらも、声がした頭の上のほうに視線を向けてみれば、そこに見えたのは――――――――――――――白と水色のストライプ?
「……なるほど。息を荒げながら覗き込んでくるとは、あなたは遅刻と早退の癖のほかに覗きの癖もある変態だったのですね」
「……………………変態? え、誰が?」
 そう返事を返しながらも、酸欠状態のシロの頭はフル回転をしていた。
 ――――えっと、この場合、あのストライプの物体は、つまり、その、すぐそばに足(?)らしきものが見えるということは、いわゆる……。
「状況説明も言い訳も一切ないということは、確信犯的行動ですか」
 ――――心なしか聞こえる声のトーンが下がったような……。
「……いや、オレとしてはこうモロに見えるのよりもチラッと見えるか見えないかのほうがっ!?」
 おもわずそう言ってしまった次の瞬間、シロは腹部に衝撃を感じてそのまま気を失ってしまった。
「……まったく、お兄様ってばこんな人から一体何を学べというんでしょうか」
 シロに衝撃波を叩き込んだクロは、ため息をつきながら携帯電話を取り出し、どこかへと連絡を取り始めるのだった。




「ねぇ、そこのヘタレ」
「ごめんなさい」
「ごめんなさいはいいから。私、ちょっと喉が渇いたんだけど?」
 数日後の鍛錬場で。コガネは笑いながらシロに向かってそう言った。
「……もう勘弁してくれよ。アレは俺のせいじゃないって言ってるじゃないか」
「そう? 私からすれば、明らかにあなたのせいなんだけど。夜遅くに学校に呼び出されてみれば、あなたがグラウンドの片隅で砂浴びをしているじゃないの。アレのどこがあなたのせいじゃないと?」
 そう言いながらもコガネは笑っていた。それはもう見るものすべてが蕩けてしまうかというほどの、とびっきりの笑顔で。
 ――――どっかで見たような……。シロは既視感を感じながらも、何度目かになる反論を繰り返した。
「だから、アレは俺が知らないうちに勝手に電話されてたんであって……」
「聞き捨てなりませんね。何ですか、つまりあなたは私が悪いといいたいのですか? あなたは変態である上に恩知らずでもあったのですか」
 少し離れたところにいたクロが、微笑みながら近づいてくる。その笑顔は見るもの全てを慈しむような、そんな微笑だった。
「いや、別にそういう訳じゃ……」
 だがしかし、その二つの笑顔とは裏腹に、二人から放たれているオーラが有無を言わせない雰囲気を醸し出していた。
「…………ごめんなさい。オレが全面的に悪かった……です」
 だから、シロは謝る事しか出来なかった。
「だから、ごめんなさいはいいから。私、ちょっと喉が渇いたんだけど?」
「そうですね、休憩がてらに冷たいものなんか飲みたいですねぇ」
「…………ハイ、買ってきます」
 シロは天井に開いた穴から空を見上げ、ため息をひとつ、つくことしか出来なかった。






「空に雲で落書きするように、『何をするのか』と『何が起こるのか』を明確に持ってみるといい、か。そんなことで本当にどうにかなるモンなのかね」
 食堂の自動販売機が壊れたままで使えないので、わざわざ校外へいって買って来たジュースを飲みながら、シロは深くため息を付いた。 
「そうね。その程度のことで魔法が使えるようになったなら『ヘタレ』の名折れよね」
「そんな事はありません。表現はかなり乱暴ですが、ある意味、魔法行使の真髄を付いていますから。そんなことも解らないなんて、やはりコガネさんはもう少し座学を学ぶべきですね」
「……さすがは『生徒会長』サマね。何でも良くご存知で」
「いや、二人で両脇から熱く火花を散らされてもオレが困るって。……実際問題、するのはオレなんだから」
 静かに火花を散らしている二人の間に座っているシロは、傍から見れば『両手に花』という、とても羨ましい状態に見えるのかもしれない。――――たとえ、当の本人がその状態からどんなに逃げ出したいと思っていたとしても。
「そうです。だから私が忙しいスケジュールの中、わざわざ付き合ってあげてるんじゃないですか」
「いや、別に頼んでないし。ってかなんで?」
 そう聞いたシロに対して、クロは蚊の鳴くような声で答える。
「…………お兄様が」
「え? ゴメン、よく聞こえない」
「そうよねー。こんなヘタレが何をやっても魔法を使えるようになるわけがないじゃない。時間の無駄というものよね」
 聞きなおそうとしたシロの声を遮って、コガネの声が無遠慮に響き渡る。
「そんな事はありません。あなたのお父様のことは簡単に調べさせてもらいましたが、あの方の息子ならばきっと使えるようになるはずです」
「無理無理無駄無駄。ヘタレの世界は、優等生様には知るべきもない深遠の奥底にあるのよ」
「そんな事はありません。というか、コガネさんはそこまで言張るだけの『何か』を知っているとでも?」
「――――そんなこと。小さい頃からこいつのことを見てきている私が言うのだから、間違いないわ」
 確かに、その言葉には確たる裏づけがあるのだった。
 なぜなら、コガネはシロの魔法特性についてシロの父親から聞かされていたし、実際に見たこともあったのだから。
 実は、シロの持つ魔法力は極々僅かな物でしかなかった。特筆すべき事はシロの魔法特性にあった。シロの持つ魔法特性は、言わば『カウンター』とでも言うべきものだった。
 自身に向けられた魔法力に対して、それを放った相手に向かってそのまま投げ返してしまうという、とても特殊な力だった。だからこそ、シロはあの時トランが放った魔法にも捕らわれることもなく、無事だったのだ。
 実際、あの時は逆に放ったハズのトランが捕らわれてしまうという状態に陥っていたのだが、自身の支配下に自身を置いたという特殊な状況に、トランはまだ気付いてはいなかった。
 シロが他人の魔法力の影響を受けるとしたら、よほど心を委ねられる相手にだけ。
 そのことを知っているからこそ、コガネはシロに対して魔法を行使することを恐れ、躊躇っていたのだし、又、シロに衝撃波を与えて気絶させたクロに対し、妙な敵愾心をも抱いたのだった。ひょっとして、シロったらクロのことを……。
「――――そんなこと。絶対にありえないんだから」
 だがしかし、コガネのつぶやくその言葉の真の意味を、クロもシロも、気付かないのだった。

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