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魔法学園小説 ―18話―

「じゃあ、手伝ってもら……」
 シロはそこまで言いかけ、言葉を止めた。
 そして、もしもこの事実がコガネに知れたときのをことを考えた。
 彼女の性格を考えれば、全て配れていなければ殺されるだろう。
 そして、その時に善意で手伝いを申し出たこの少女にまで手を出しかねないと。
「どうしました?」
 少女が心配そうにシロを見ていた。
 こんな良い子を巻き込むわけにはいかない、とシロは決意し、言った。
「その気持ちだけで十分だよ」
 少女の好意を無駄にすることに少なからず罪悪感と心残りを感じたものの、それ以上に少女を巻き込まずに済んだという安心感の方が強かった。
「や、やっぱり、私のことなんか信用出来ないでしょうか?」
 少女は目に涙を溜めながらの訴えにシロは思わず動揺した。
 少女の言っていることはあながち間違いではなく、少女の力を疑っているからこその判断だったからだ。
「……そんなことはないけど、でも、1枚でも残したら君もひどい目に会うかもしれないし」
 シロはもし、コガネがその場にいたら意識が飛ぶ程度ではすまないほどの膝蹴りが飛んでくること必至な発言をした。
「それなら大丈夫ですよ」
 先ほど浮かべた涙の影さえ見えない笑顔をしながら少女は言った。
「10分後くらいにこの紙を受け取ってくれる男の人の姿が見えましたから」
 自信満々に言う少女にシロは折れるしかなかった。
 シロは押しに弱い自分を心の中で罵倒しつつ、少女に対しての恨み言も忘れなかった。
「……じゃあ、よろしく」
「はい、任されました」
 少女は笑顔でそう言って、紙を受け取った。
 シロも半ば自棄になっていて、どうやったらコガネの怒りを沈められるかと考えていた。
 そうして数分間を過ごすと曲がり角の方から十数人の男たちが談笑しながら現れた。
 全員が同じ運動着を着ていることから同じ部活の人間なのだろうと推測できる。
「あ、あの!」
 少女が声をかけると男たちは少女の方を見る。
「あの、これ……貰ってくれませんか?」
 男たちは少女のいきなりの行為に驚きながら、少女の手に握られている紙を受け取る。
 そして、内容を見た全員が不審に思いながら少女を見直す。
「えーと、これは何かな?」
 先頭に立っていた男が少女に出来るだけ優しく訊ねた。
「この人が配れなくて困っていたので代わりに」
 そう言いながら、少女はシロを指差した。
 そして、それだけで男たちはどういうことかを何となく察したらしく、シロに同情的な視線を向ける。
「でも、これって受け取ったらヤバイんじゃ……」
 後ろの方にいた男がぽつりと呟いた。
 毎日のように吹っ飛ばされているシロはもちろんのこと、それ以外の人間にもコガネは危ない存在だと認識されていた。
 むしろ、シロはコガネのいいところも知っていることを考えれば、他の人間の方が危ないと思っているだろう。
 例え、内容が読めようが読めまいが関係なくコガネに関わろうとする人間は圧倒的に少数なのだ。
「大丈夫ですよ」
 しかし、少女はそんな不安など吹き飛ばしそうな笑顔で言った。
「あくまで、紙を受け取ってくれればいいんです。後で何かされるなんてことはありません」
「……本当に?」
「何かされたらシロさんと一緒に何でもしますよ」
 『何でもする』などという年頃の女の子の口から出てはいけないようなことを平然と言ってのける少女を見て多少は信用したのか、男たちはしぶしぶ了承するような素振りを見せた。
「……じゃあ、貰っていくよ」
「あ、言い忘れてましたけど、捨てるなら家で捨ててくださいね」
 少女がそう言うと、男たちは一様に動揺したが、すぐに諦めて歩いていった。
 少女はそんな男たちを見送ってから、シロの方を見る。
「これでいいですか?」
 その満面の笑みにシロはまた和んだ。
 少なくとも、シロの周りでは不足していた要素だった。
「ありがとう。おかげで助かったよ」
 そんな少女の笑みのおかげか、それとも、コガネに殺されなくなった安堵からかシロは簡単にお礼を言うことが出来た。
「(問題があるとすれば、参加してくれないだけど……)」
 参加してくれないということは当日に殺される可能性が高い。
 しかし、シロにとってはこの場を凌ぐことは出来たと考えられる十分な成果だった。
「いえいえ、困ったときはお互い様ですよ」
「じゃあ、君が困ったときは絶対に助けに行くよ」
 と、普段のシロからは想像も出来ないようなことを言った。
「……まぁ、俺なんかじゃ頼りにならないだろうけどな」
 恥ずかしくなったシロはそう言うことで恥ずかしさをごまかした。
「そんなことはないですよ。困ったときはシロさんに相談しようって思えました」
「それなら、いいけど」
 シロは恥ずかしさでそう呟くことで精一杯だった。
「それじゃあ、さようなら」
 少女はそう言って頭を下げると、シロが歩いてきた方へ歩いていった。
「……良い子、だったなぁ」
 もし、コガネがその場にいれば変態の誹りは免れないようなことを呟いた。
 もっとも、言われることが分かっていたとしてもシロはそう呟いていただろう。
 それくらいにシロは少女に感動していた。
「そういえば、何で俺の名前知ってたんだろう……」
 ふと、浮かれている自分に水をかけるようなことを呟いた。
 特に考えて出た言葉ではなく、漠然としているものだった。
 だから、占いで知ったか、不名誉な有名人になっている自分だから知っていたかのどちらかだろうと思い、すぐに考えるのを中断した。
 そして、少なくとも今日明日は死なないであろう状況に喜びながら、茜色に染まる校舎を後にした。
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