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魔法学園小説 ―32話―

「え……?」
 シロはその光景を理解できなかった。
 何故、コガネがトランたちを攻撃しないのか。
 何故、コガネが踵を返して帰ろうとしているのか。
 何故、自分を助けようとしないのか――
「間一髪だったな」
 トランは言葉とは裏腹に落ち着いた様子でそう呟いた。
 確かに、コガネの襲来は凄まじいものだが、それでも、十分に予想の範囲内であるが故に恐れるものではない。
 ある程度、襲撃の時間が予想できるコガネと違い、PTAからの刺客は予想が出来ない。
 さらに、何よりも一人である保障もないのだ。
 そう考えれば、単身で何の策も無しに突撃してくるだけのコガネはどれだけ楽なことか。
「……これで、君の助けはもう来ない」
 なるべく早く済ませようと思い、トランは再びシロに話しかけた。
「何で、何でコガネは帰って行ったんだよ!? お前らが何かしたんだろ!?」
 シロはいつもなら考えられないような声量で叫ぶ。
 コガネが自分を助けなかったことが不安や恐怖に対する限度を超えてしまったのだ。
「確かに、コガネくんに何かをしたね。 だけど、それがどうしたっていうんだ」
「……っ!」
 しかし、トランにとってそんなこと指摘されようと痛くも痒くもない。
 コガネのあのような変化を見れば、何かをしたことがすぐにバレることなど考えるまでもなく当たり前だからだ。
「もういいじゃないか。 君が戦いたくないというのなら何も言わない。 ただ、私たちの仲間になってくれるだけでいいんだ」
 トランはシロを安心させるために今までと打って変わって優しさを込めて言った。
 無論、いくらヒルグの息子だからといって戦線に出ないことが許されるわけない。
 それどころか、扱いとしてはリーダーに近いのだから戦線に出てくれなければ不満を生み出すこともある。
 しかし、トランはあえてそのことを伏せた。
 何故なら、そのことを教えることにメリットがない。
 それならば、シロがしぶしぶでも動かざるおえない状況にする方がよっぽど得策なのだ。
 そして、トランの個人的感情としてはシロを戦線に出すようなことはしたくないと思っていた。
 もし、シロが戦線に出るようになれば、味方の士気はあがり、コガネが仲間になるのだから戦局は有利になるだろう。
 しかし、そうなれば今のトランたちのリーダーである『彼女』を差し置いてリーダー扱いされてしまうのは明白。
 その方がいいと理屈では考えていても、感情としては納得できなかった。
「(私もまだまだ甘いな……)」
 もし、本気で彼女のためを思うというのならば、シロがリーダーのような扱いを受けるほうがいい。
 それにも関わらず、それを良しとしないのはトランの『彼女は一番輝き続けて欲しい』という思いがあるからだ。
 トランはそんな自分を客観的に見て自分にも少しは年相応の感情があるのかと自虐的なことを考え、すぐにそんな自分を叱咤して今の任務であるシロの勧誘に集中しようとする。
 しかし、シロの隣にいる少女が目に入り、思わず硬直してしまう。
「あれ、何で飛べな……あ、そういえば魔法を無効化するかもってクロちゃん言ってたっけ。 どうしよ、こんなとき、どうすればいいんだろ……」
 少女はシロの二の腕を掴みながらオロオロとした様子で周囲を見回している。
 そんな少女をいち早く危険だと判断したベノムは何の予告も無しに機関銃による頭部への射撃を行った。
 しかし、その攻撃は一発も掠ることさえなく少女を通り過ぎていく。
「あ、危ないじゃないですかー!」
 確実に当たったと思っていたベノムたちは予想外のことに驚いた。
 驚かなかったのは魔力が見えるトランだけである。
「君は……何者だい?」
 少なくとも、トランの知る限りではPTAに少女がいた覚えはない。
 もちろん、全員を把握しているわけではないが、それでも、少女はPTAの刺客ではないだろうと判断してもいいくらいに少女とPTAが結び付かなかった。
「私の正体ですか? いい質問です」
 つい、数十秒前まで怒っていたはずの少女は満面の笑みを浮かべていた。
「私は生徒会所属の純情可憐な」
「そうか、生徒会か」
 特に少女の名前などに興味がなかったトランは少女の長くなりそうな前口上を切った。
「な、なんということでしょう……名乗れと言うから名乗ってあげようとしたのにこの仕打ち……!」
 そんなトランの心ない対応にまた怒り出す少女にベノムは「こいつは馬鹿なんじゃないか?」と油断しかけるが、すぐに生徒会の一人だということと自分の攻撃を避けたという事実を思い出し、警戒し直す。
「まぁいいです。 それより、この少年をこちらに渡してください。 そうすれば、この場で暴れていたことを今は見なかったことにしてあげます」
「……それで引け、と?」
 少なくとも、もう戦う力の残されていない自分や部下たちはこの少女に勝てないだろうが、それでも、 ベノムとべリアル二人なら十分にこの少女に勝てる自信があると考えていた。
 何より、「今は」というのはつまり、後で言及するということである。
 PTAだけでも厄介だというのに生徒会まで敵に回す気などない。
 だから、トランたちはこの少女がこのことを喋れないようにする必要があった。
「いや、彼の顔を見てください。 真っ白じゃないですか」
 返事はベノムの機関銃による射撃だった。
 シロを狙わないようにかつ、少女を確実に殺してしまう部位を狙う。
 しかし、今度も一発も当たることなく少女の身体を過ぎていった。
「しょうがないですね……これより、公務執行妨害の罰としてみなさんには痛い目にあってもらいます」
 少女は満面の笑みでそう言った。




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