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魔法学園小説 ―25話―


「(……あぁ、なんだろ、この状況は)」
 シロは自分の前に差し出されたカレーを見つめながら何度考えたかも分からない疑問について頭を悩ませていた。
 先ほども同じことを考えていたが、状況はまるで違う。
 まず、ここがバイオレットの住む家だということ。
 次にここに向かう途中で偶然にも出会ってしまったコガネとバイオレットの兄妹であるトランもいるということ。
 最後にこの4人で丸テーブルを囲み、カレーを用意されているということだ。
「さぁ、遠慮せずに食べてくれ」 
 トランは笑顔を浮かべながら、同じように笑顔を浮かべるコガネに言った。
 ただし、シロはそのコガネの笑顔がキレる寸前の溜めのようなものだと知っていた。
 そして、下手に何かしようものなら攻撃対象にされることも知っていた。
 そのことを知らないバイオレットも俯いている。
「いらないわ。シロの時のように何をされるかわかったものじゃないもの」
「嫌われたものだね」
 コガネの言葉にトランは演技くさく肩をすくめる。
「しかし、私は結局のところは何もしてないのだよ?」
「はぁ?」
 トランの一言にコガネとシロは素っ頓狂な声をあげる。
 クロに呼び出された日に精神操作を仕掛けたと言った人間が何を言っているのか、と。
「恥ずかしながら、精神操作を仕掛けたはいいが、見事に失敗してしまっていてね……いや、成功すると思っていたんだけどね」
 トランは頭を掻きながらそう言った。
「……で、まさかアンタは自分の技量不足で失敗したことを理由に何もしてないだなんて言うのかしら?」
「あくまで結果論で言えば、さ。それに、失敗したのは私の技量不足じゃなくてシロ君の魔法のせいさ」
「俺の……?」
 シロは耳を疑った。
 自分にそんな魔法を無力化することが出来るとは思えなかったからである。
「いや、正確に言えば彼らの君を守りたいという想いか。さすがはヒル……」
 トランは途中で言葉を止めた。
 彼の目の前にはコガネの拳がある。
「人の話してる最中に殴りかかろうだなんて、さすがにどうかと思うけどね」
「……どこまで知ってるのかしら」
 その顔には既に表情は見えなかった。
 ただ、返答次第ではすぐにでも殴りかかる意志だけが見えた。
 それを見たバイオレットはあからさまに椅子ごと後ろに後ずさっている。
「ちょ、ちょって待てよコガネ!」
 シロは慌ててコガネをなだめた。
 このままではヤバいと本能的に感じたのだ。
「アンタは黙ってて」
 しかし、コガネは視線さえ向けずにそう言った。
「まったく、君は少しは話し合おうとは思わないのかい?」
「ご託はいいからさっさと答えなさい」
 シロはいつもとは違うコガネに戸惑っていた。
 普段から理不尽だとは言っても、シロ以外の人間には基本的に口が悪いだけなのだ。
 それが今はいつ殴ってもおかしくない状況なのだ。
「そこまで多くのことは知らないさ。ただ、君たちの知らないことでもそれなりには知っているという程度だろうね」
 こんな状況であるにも関わらず、トランは余裕そうに喋っている。
「例えば、あの飛行機事故の主犯とかね」
「飛行機……事故?」
 シロはトランが言ったことを繰り返し、頭の中で反芻する。
 そして、それがすぐに自分の巻き込まれた事故だということに至った。
 しかし、その瞬間に次の疑問が浮かぶ。
 何故、事故なのに主犯がいるのだろうか、と。
 その答えもすぐに分かったが、思考が落ち着くことはなかった。
 むしろ、焦燥が生まれ、さらに混乱していく。
 まともに考えて話す余裕などなかった。
「単刀直入に言おう」
 トランはそこで一旦、言葉を区切ってから言った。
「その主犯たちを倒すため、一緒に戦ってくれないか?」 
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