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魔法学園小説 ―26話―

「嫌よ」
トランが「一緒に戦って……」とまでいった直後に、コガネの鋭い声が、飛んだ。
「おやおや。少しは考えたらどうなんだい?」
「考える必要なんてないわ」
「全く、君は少しは頭を使うことを学んだほうがいいんじゃないのかい?」
「使う必要があるときは使うわ。でも、それは今じゃない」
どこまでもとぼけた口調のトランと、感情のこもっていない声のコガネ。
「何故? そんなに私が信用ないのかい?」
「信用? あなたの口からそんな台詞が出るなんてね」
「こんなにも誠実に話をしているのに、一体どこが不満なんだい?」
「全てよ」
二人の舌戦が繰り広げられる中、シロはトランが言った「主犯」という台詞を何回も何回も反芻していた。
(――アレは事故だったはずなのに。でも、主犯がいるってことは事故なんかじゃなくって……。でも別に犯行声明も何もなかったって……原因不明の事故だったって……。でも、もし事故じゃなかったとしたら……今頃……でも、怪しい点は別になかった、あくまで原因不明の事故だったって……。でも、その主犯とやらが事故を装っていたのなら……)
堂々巡りの思考の渦にいたシロは、トランとコガネの事に注意を払っている余裕などなかった。
いや、意識の端では気にかけていただけでもマシなほうなのかもしれない。シロはこの部屋の中にもう一人の人物がいることを、すっかり忘れ去っていた。
「あ、あの、シロさん。……大丈夫ですか?」
「うわぁァァ!?」
突然、誰かに両の手をさわられて、シロは思わず叫び声を上げてしまった。
「あ、あの、シロさん?」
「ァァァぁ……あ?」
シロが我に返ると、目の前にやや困った表情のバイオレットがいた。
彼女の手が、そっと自分の両の手に添えられているのを見たシロが、再び叫び声を上げて飛び退る。
「うわぁァァ!?」
そしてそれきり、部屋の中は静まり返った。
―――――――― カチッ、カチッ、カチッ。時計の針の音が聞こえてくる以外、物音ひとつしない。
バイオレットが悲しそうな顔で見つめてきている。
なんとなく視線を感じて、顔をゆっくりと横に向ける。
そこには、先ほどまで激しく舌戦を繰り広げていた二人が、揃って奇妙なものを見るかのような目付きて、こちらを見つめていた。
「「「「…………………………。」」」」
誰も、何も言わない。誰もが、何もいえない。そんな微妙な空気が流れる。

―――――――― ぐぅーーーーっ。

そんな雰囲気をものともせずに、シロの腹の虫が鳴った。
その音を合図にしたかのように、その場の雰囲気がふっと緩む。
「全く。シロったら、少しは場の空気って物を読んでほしいわね」
「まぁ生理現象なんだから、仕方がないといえなくはないがねぇ」
「そんな。シロさんが悪いんじゃありません」
失笑と、苦笑と、擁護と。それぞれの言葉を聴きながらも、シロは恥ずかしさのあまり顔を伏せたまま上げられなかった。
「はっ。何寝ぼけたこと言ってんの。鳴ったのはシロのお腹なのよ?」
「まぁまぁ、二人とも。そんなことで言い合っていると、余計にシロ君がいたたまれなくなるんじゃないのかな」
「あ、……ゴメンなさい、シロさん」
(……あぁ、なんだろ、この状況は。どうしてこんなことになったんだろう)
シロはここにきてから幾度となく考えたことについて、もう一度考考えざるを得なかった。
何故、自分はこんなところにいるのだろう。何故、こんなにまでしていなければならないのだろう。
(はぁ……なにやってんだろ、俺は。どうしてこの……えーっと、この子の家まで付いてきちゃったんだろう)
ぼんやりと考えをめぐらすシロの周囲では、今度はコガネが批判してバイオレットが擁護する、という奇妙な舌戦が続いていた。
(大体、いまさらあの事故がどうだとかなんてどうでもいいじゃないか。犯人がいようといまいと、両親が帰ってくるわけじゃないし)
そう思った瞬間を見計らっていたかのようなタイミングで、コガネの声がシロの意識に触れる。
「はっ。時間の無駄ね。シロ、帰るわよ」
「…………だな」
半ば無意識でコガネに賛同したシロは、考えるよりも先に、すっと食卓から立ち上がった。
そんなシロの様子を、バイオレットはただ静かに見つめるのみであった。悲しさも寂しさも、何の感情も感じさせないような表情で。
だがしかし、シロはその不自然な無表情には、一切気付かなかった。
「帰ろう、コガネ」
シロの声に、コガネがまるで勝ち誇ったかのような表情で席を立つ。
「おやおや、そんなに私の作った料理は食べたくないのかな」
「当たり前じゃない」
「ふむ。なるほど。……だがしかし、これだけは忘れないでいてくれ」
そこで一旦言葉を切ったトランは、コガネの両目を見つめながら、こう続けた。
「私は君たちのことが、仲間として、是非欲しいんだ」

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