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魔法学園小説  ―35話―

「ん……」
 全身がけだるい感覚に襲われているのを感じながらシロはゆっくりと意識を覚醒させる。
 そして、覚醒していく意識は一つの疑問を浮かべた。
「(あれ、どうしてベッドで眠ってたんだ……?)」
 そこは紛れもなくシロの家のベッドであるし、首を動かして周囲を見回してもここが自分の家だということが分かる。
「(えっと、帰りに校門でベノムと出会って……それから、何もなかった)」
 すぐにトランに言われたこと、コガネが自分を置いて行ったことを思い出し、否定する。
「(そうだ、あれは夢だ……ベノムと出会っただけで委縮した俺が家で寝て見た夢……そうに違いない……そう、だよな……?)」
 シロは毛布に包まり、震えながら今日の出来事を否定し続けた。
 重要なことを忘れてることにも気付かずに。




―――――――――――――――――――――


「え、えらい目に会った……大体、クロちゃんは説明しない割に細かいんだもん。嫌になっちゃう」
 ほぼ同時刻、クロの説教で精神的に疲弊したトキワが愚痴をこぼしていた。
 本人の前で言えば説教が長くなることは明白なので、こうしてクロにバレないところで愚痴をこぼすことがせめてもの仕返しだった。
「トキワ先輩、こんなところでどうしたんですかぁ?」
 予想外の声にトキワは慌てて後ろを振り向くと生徒会の資料と思しき書類を抱えて部屋から出てくるルリの姿があった。
「……ルリちゃん、今の私の言葉を聞いてたりする?」
 自分の愚痴が聞かれていたらどうするかと考えつつトキワはルリに聞いてみた。
 もし、告げ口でもされる可能性があれば魔法を使ってでも口を封じる心構えさえある。
 そう思わせるほどにトキワにとっての怒るクロは恐ろしかった。
 それがバレたらさらに怒られることにまったく気付かないほどに。
「え? ……何も聞いてないですぅ」
 しかし、幸か不幸かそんなトキワの気迫がルリに「聞いてない」と答えた方がいいと思わせた。
 その気迫を抜きにしても何を言っていたのかまでは聞こえてなかったのでどちらにしても口封じなどする必要はないのだが。
「ならいいんだけどさ……あ、何が聞きたいんだっけ?」
「いや、どうしてこんな時間にこんなところにいるのかなぁと」
「あー、それが聞いてよ。 私、クロちゃんにいきなり呼び出されちゃってさー」
「はぁ……」
 ルリは心の中で余計なことを聞いてしまったと後悔する。
 このような話題でトキワが長話をしなかった試しがなかったためだ。
 ついでに、その発言でトキワが何を言っていたのか大体は把握出来たルリは場合によっては告げ口でもしてやろうかとも思った。
「で、クロちゃんの指令でシロくんの監視とか護衛とかしてたら急にお腹が空いてきて丁度ポケットに入ってたお菓」
「先輩の護衛……? 監視は分かりますけど、護衛って何から守ってたんですぅ?」
「えーっと、確かあの時にいきなり入ってきた金髪の……」
「……あぁ、分かりましたですぅ」
 ルリは頷きながら、今までの出逢いでトランがどのような人間だったかを思い出し、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「でも、私たちの方針は基本的に事後処理なのに何ででしょう?」
「さぁ? まぁ、私が守るまでもなく勝手に撃退しちゃったんだけどねー」
「お姉さまが来てたんですか!?」
 ルリはコガネの雄姿を見ることが出来たのだろうかと驚きと無念の声をあげる。
「んーん、来たことは来たんだけどシロくんのことを助けずにそのまま帰っちゃったよ。 だから、私が助けようと思ってその場に向かったらシロくんが見たことない魔法でぶわーって光ってねー」
「え、先輩が……?」
 ルリは2、3年前からシロたちと付き合いがあるにも関わらず、そのような話は一度たりとも聞いたことがなかった。
 そもそも、低級魔法すら失敗してしまうシロにそんな大がかりな魔法が使えるなどとは考えたことさえない。
「それは彼らが使ったものであって、先輩が使ったわけじゃないという可能性はないんですか?」
「みんなダメージを受けてたし、シロくんを中心に発生してたからそれはないよ」
「(実は普通に魔法が使えた? だとしても隠す必要がないですし……そもそも、隠したいことだったらトキワ先輩がやられるまで待ってもいいはずなのに……それとも、何か発動出来ない理由があった? 例えば、精神的に追い詰められているときにしか発動出来なくて……)」
 ルリは思わぬ事実にトキワがいることも忘れて考え込む。
 シロがそんな魔法を使えたこと自体は大した問題ではなくとも、そこに生徒会がわざわざ守らねばならない理由が隠されているような気がしてならなかった。
「(そもそも、あの男が先輩を狙った理由は本当に妹のため? 実は先輩がそんな魔法を使えることを知っていて狙ってたとか……でも、それじゃあ何のためにそんな力を求めたんだろう? ……駄目だ、知らないことが多すぎて推理にならない」
 生徒会に入っているにも関わらず、まるで情報を持たないために推理が出来ないこの状況に苛立ちを募らせた。
 ルリにとって、生徒会に所属していることなどコガネの役に立つために過ぎない。
 にも関わらず、コガネが手に入れたいであろう情報がまるで手に入らないこの状況はあってはならないことなのだ。
「(……そうだ、お姉さまは先輩がその魔法を使えることを知っていた? てっきり、あの男が何かしたものだと思ってたけど、先輩が魔法を使え……違う。 そうだとしたら、そもそも来る理由がない」
「あのー、大丈夫?」
 ルリはトキワに声をかけられ、ようやく自分が深い思考に没頭してることに気付いた。
「……はい」
「何考えてたのかは分からないけど、あまり考えすぎるのもよくないよ?」
「でも、気になるものは気になるですぅ」
 もし、これが自分の知らない赤の他人だったら気にすることなどなかっただろう。
 しかし、ルリにとってシロは良くも悪くも赤の他人ではなかった。
「……そうだ、資料室になら何かあるかも」
「資料室は許可もなしに入っちゃ……」
「……トキワ先輩は来てくれないですか?」
「うーん、そうすると後でクロちゃんとか先生に怒られるのは私だし……」
 トキワは言葉を濁して断ろうとする。
 ただでさえ、先ほど怒られてきたばかりだというのにまた怒られる事態に陥るのはごめんだった。
「分かりました……。 じゃあ、一人で行きます」
「まぁ、それなら……」
「で、捕まったときにはトキワ先輩に許可をもらったと言います……」
 トキワは今までにないルリの黒い発言に驚きを隠せなかった。
 トキワにとって、ルリは比較的まともな人だとさえ思っていただけにその驚きはトキワに反論させることを諦めさせるほどだった。
「……あのさ、人を脅すのはよくないと思うんだ」
「え、何か言いました?」
「……」
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